「都市」と「近くの農業・農村」を結ぶ柏たなか農園のブログ

投稿日:2012年8月3日 11:16 pm


東大工学部の山田一郎教授が主宰する「IT農業P研究会」という勉強会があり、私も数年前から参加しています。このIT農研のみなさんに3日、柏たなか農園を見学してもらいました。柏たなか農園にはITらしい設備があるわけではありませんが、現場の視点に立った農業のIT化を考える材料にしていただけたらとの思いから来ていただきました。

現在、柏たなか農園の主力作物はスイカです。麦を刈り取った後に麦わらをそのまま残し、その上にスイカのつるを這わせるという栽培方法です。ちょうどスイカの花が咲き、毎日受粉がおこなわれ、次々と実ができてくるタイミングです。スイカ畑にはスイカの実がなった場所に目印として立てたメダケが目につきます。そのスイカ畑を背に柏たなか農園のスイカ栽培法を説明しました(写真)。私が今一番望んでいるのはスイカを割らずに中身の甘さを推定できる安い測定器です。今でも数十万円以上の測定器が売られてはいますが、スイカの販売価格と比較すると割に合わないという結論になってしまいます。農作物の価格に対応した低コストの機器が求められているのです。



農園の一番奥では落合さんが自然農法という栽培方法で野菜や雑穀を栽培しています。ここではパソコンを使って作物の栽培管理に必要なデータを記録、分析する仕組みにトライしています。畑の状態をカメラで撮影しスマホに送るなど柏たなか農園で唯一、ITらしさを感じさせる設備なので、落合さんから説明してもらいました(写真)。自然農法は雑草などを含め出来る限り自然環境を生かすという考え方のようですが、半面草刈りに追われることになります。そこで落合さんからは「低価格の草刈りロボット」に期待しているとの話がありました。

農園見学の後は東大柏キャンパスの山田先生の研究室に移動して懇親会。柏たなか農園で採れたナス、ピーマン、トマト、キュウリ、ネギなどを柏駅前の居酒屋「SHIN」で調理、モチ麦ごはんのお弁当にして食べてもらいました。

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投稿日:2012年6月22日 12:34 am

今日、柏市最大の農産物直売所「かしわで」の放射線測定チームが柏たなか農園に来て、畑の土壌に含まれる放射性物質の量を測ってくれました。

柏たなか農園では昨年秋から農園内の放射線量を測ってきました。今回はその中でも比較的高い線量が測定された畑を対象に土壌に含まれる放射線量を詳しく調べてもらいました。その結果は300700Bqkgで、この畑で収穫する野菜が国の基準値である100Bqkgを超える、または近い数値になることはないと考えて良いようです。実際、6月初めに収穫したばかりの「もち麦」は5Bqkgでした。

とはいえ、畑が放射能によって汚染されたことは事実で、畑の中でも放射線量の高い場所はあります。先週、居酒屋「SHIN」の篠田さんが率いるNPOが柏市放射線対策室の協力を得て柏たなか農園の畑全体の放射線量を詳しく調べてくれました。その中ではビニールハウスの両脇が柏市の基準値を大きく上回るなどが明らかになりました。昨年の原発事故直後にビニールハウスに積もった放射性物質が降雨によって流れ落ちたと思われます。

放射線量の高い場所については「除染」といって放射線量の高い土壌をはぎ取り、降雨などで流出しないようにして保管しています。東京電力の原発事故の後、汚染物質の除去が最も緊急を要する課題ですが、国も東京電力も現在に至るまで、正面から取り組む気配はありません。4月に柏市で開催された東京電力の農家に対する補償説明会では「汚染によって生じた農産物の販売額の減少については補償する」としていましたが、汚染物質の除去については「国の方針も示されていないので、現時点では補償の対象にならない」とのことで、完全にゼロ回答でした。

田畑の放射能汚染対策については国や東京電力だけでなく地元柏市で農業を担当する農政課も地元の農協もまったくの及び腰です。一刻も早く汚染マップを作り、汚染度の高い場所の除染を実施して、データの上でも消費者に安心してもらえる対策を取らなければならないはずです。にもかかわらず、農地汚染の現状を数値で把握することもなく、まして放射線量の高い場所の除染など全く考えていないようです。

除染費用について国や東京電力が負担する可能性が全く見えないこと、除去した汚染土壌を保管する場所が確保できていないことなどによると考えられますが、肝心な時に逃げ回っている関係者らの姿勢には憤りを感じます。さらに汚染物質の除去に頬かむりしたまま、原発の再稼働に突き進む政府の姿勢には呆れかえるばかりです。これは原発賛成/反対とか必要/不要といったこと以前の問題です。汚してしまったらまず汚れた場所をきれいにしてから次のことを議論すべきでしょう。農家が自己負担で除染をしなければならない現実に対して、怒りをどこにぶつければよいのでしょう。

「かしわで」は約220の会員農家の田畑をすべて測定し、柏市内の放射能汚染マップを作ろうとしています。ようやく3分の1まで来たところです。柏市が放射能汚染の“ホットスポット”とされ、柏の農業が風評被害も含め多大な損失を被る中で、消費者の安心、信頼を取り戻すために止むにやまれず取り組み始めたものです。しかし、農産物直売所が自ら動き出さなければならなかったのは公的セクターの怠慢、逃避の結果ともいえます。「いざとなったら逃げる」ような公的セクターとは何なんでしょう。税金や電気料金を払うのがばかばかしくなります。

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投稿日:2012年6月5日 10:17 pm


この時期、5月末から6月にかけては1年で一番天気に悩まされます。柏たなか農園の主力作物であるモチ麦を収穫する時期だからです。

「できることならずうーと晴れてほしい」と空を拝むような心境です。晴れが続きさえすれば麦の実りが進み、収穫できるようになります。収穫した後、日に干して乾燥させ、さらにゴミを取り除くまでの後工程もうまく行きます。ところが、この時期の天気は不安定になりがち。たとえ1日晴れてもその先が読めないので、なかなかスタートボタンを押せないのです。そうはいっても、いたずらに決断を遅らせていると「倒伏」といって麦が倒れてしまい刈り取ることも難しくなります。このため毎年、ギリギリの決断を迫られます。

今年は昨日、64日に刈り取りをしました。麦が収穫できるまで実ったかどうかは麦の水分量で判断します。だいたい15%を切るくらいになればよいのですが、今回は平均で17%強とかなり高めです。すべての実が一斉に熟して行くわけではないので、一部水分量が多くても見切りで収穫を始めなければならないのですが、それにしても今年は倒伏してしまうのではないかという不安からかなり前のめりになってしまいました。

収穫はコンバインという農業機械を使います。去年の今頃は中古で買ったコンバインが壊れてしまい急きょ別の中古機を探さなければならず、大変な思いをしました。それから1年、シートカバーを掛けて大事にしまっておいたのを出してきました。作業はいつも手伝ってくれている居酒屋「SHIN」の篠田さんにも協力してもらいました。刈り取り作業そのものは順調で利根川寄りの麦畑を2時間余りで片づけました。残るは県道寄りですが、もう少し水分量が落ちるのを待ってからとします。

生乾き状態のモチ麦を天日で乾燥するのですが、十分乾燥させるには晴れて暑い日が2日か3日はほしいところです。ところが今日は1日曇りで気温も上がらず、さらに明日は雨模様ということでモチ麦の天日干しがなかなか進みそうもありません。気温も低めの予想です。このまま梅雨に入りでもしたらどうなってしまうのだろうと心配になります。とにかく雨や朝露に当たらないようにビニールハウスの中にシートを敷いてその上にモチ麦を広げました。

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投稿日:2012年5月31日 9:10 pm



今、農園は花盛り。お花畑ではポピーがいま真っ盛り。去年までと比べると花の数が少ないように見えます。今年は季節が春になっても気温の低い日が続いたこと、去年種まきした後の栽培管理がうまくなかったことが原因でしょうか?それでも真っ赤なポピーの花が約100mも続き、畑の景観を作ってくれました。
夏に向けてトマト、キュウリ、ナス、スイカ、カボチャなどの果菜類も次々と花をつけ始めました。この後、トマトはわき芽を取りまくり、キュウリやナスは収穫に追われ、スイカは収穫のタイミングを測り、カボチャは長期間にわたり雑草対策に悩まされることになります。それでも花が咲かなければ始まりません。これらの花のおかげで農園も私もとても明るい気持ちになります。


一方、困った花もあります。葉物野菜も一部花が咲きトウ立ちしてしまいました。ホウレンソウは中心部に茎が立ちあがりました。シュンギクは頂上に丸い蕾を付けています。もうそろそろおしまいという合図です。茎ブロッコリーも花をつけ始めました。普通のブロッコリーと違って主な食用部分は茎なのですが、花が咲くと間もなく茎の周りのすじが硬くなり食べられなくなります。というわけで、葉物野菜では花が咲いて困ったなという状況です。


ジャガイモは薄くピンクがかった色の花をつけています。雑草も花盛りですが、こちらは入れ替わり立ち替わり、無数の雑草が花を咲かせては実を結んでいくので、いつが花盛りか分からないほどです。
うれしい花、そうでない花――人間の都合で勝手なこと言ってます。きちんと栽培管理ができていればみんなうれしい花になるのかもしれません。

投稿日:2012年5月21日 7:14 pm



サングラスの向こうに輝くオレンジ色のリング、柏たなか農園からもくっきりと見えました。写真はこの日のために200ミリの望遠レンズと受光量を10万分の1に減らすフィルターを用意して、前日にリハーサルまでやった元理科少年の溝井さんが撮影したものです。

早朝の空模様はタイルを張り付けたような雲でおおわれていました。時々タイルとタイルの隙間のような雲の切れ間から日がさしてきます。何と幸運なことでしょう。午前630分過ぎ、まさにその時間帯に雲の切れ間に太陽が来て、写真のようなリングを見ることができました。

土の学校の会員さんらに「農園で金環食を見よう」と呼びかけたものの、集まったのは発案者の白石さんと溝井さん、それに私を入れた3人だけ。考えてみれば平日の朝730分というラッシュの時間帯にのんびりと柏の畑で日食など見ていられる人はそうはいないはずですね。それにしても金環食、見ることができて良かったです。

この日は農園に連れてきて1ヵ月半にもなるヤギくんたちも金環食がよく見える利根川堤防のすぐわきに連れて行ったのですが、太陽の異変には特段の関心も示さず、黙々と雑草を食べていました。



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