「都市」と「近くの農業・農村」を結ぶ柏たなか農園のブログ

投稿日:2022年3月16日 8:09 am

 「資材不足で大変なことになる」--ぼんやりウクライナ戦争のテレビを見ていて突如、気が付きました。あわてて資材を発注しました。もち麦の包装材に使うナイロン袋、中に入れる脱酸素剤、箱詰めに使う段ボール。案の定、ナイロン袋のメーカー在庫が底をつきかけていました。資材を扱う問屋さんの話では当社が注文した数量でぴったり在庫ゼロになったそうです。気が付くのが一瞬遅れていたらもち麦を袋詰めすることができず、あと1か月くらいでもち麦の製品在庫がなくなるところでした。危なかったです。

 世界はサプライチェーンでつながっておりどこか1カ所でも滞ると大変なことになると頭では分かっていても欧州の戦争が直ちにもち麦の事業に影響してくるとは想像力が働きませんでした。ぎりぎりのタイミングでもち麦用の資材を確保することができたのは幸運としかいえません。

 

 ウクライナ戦争の勃発からまもなく3週間、米国筋がロシア軍の動きに警鐘を鳴らし始めてから1か月近くに及んでいます。この間ガソリンをはじめ石油製品が急速に値上がり、先行き不安が買いだめをあおる形で需給がひっ迫しています。半導体製造や自動車の排ガス触媒に使われる希少金属も供給不足になり自動車メーカーが休業に追い込まれる事態です。

 

 この先資材不足と値上がりが日常化するのでしょう。さらに円安で輸入価格の上昇が重なり大変なことになりそうです。ユーラシア大陸の西側で起きていることはもはや対岸の火事だなどとのんきに構えている状況ではなくなりました。小さな農家にも確実に影響が及んできています。

投稿日:2020年2月16日 5:25 pm

 2020年度土の学校の開講が来月初旬に迫り準備に追われています。その中で今年は通常の準備作業に先立ち畑の水はけ対策を進めてきました。


 昨年は秋の台風以降、長雨にたたられ秋冬野菜がかなり苦戦しました。柏たなか農園の畑は全体にゆるい傾斜になっているので大雨が降っても畑の表面に近い雨水は流れてしまうのですが、昨年秋は雨降りの後になかなか晴れがなく、畑の表面が乾くまで行かないうちに次の雨が来るという繰り返しで作物の根がずっと水に浸かった状態になってしまいました。気象異変で今年も同じような天候になるおそれがあり今から準備しておくことにしました。

 

 対策としては畑全体に弾丸暗渠といって30cm程度の深さに縦横に貫く穴を掘りました。トラクターの後ろに溝掘り装置を取り付け、その先に付けた弾丸状の穴掘り器具が畑の深いところに穴を開けて行くという仕組みです。雨降り続きで表面から流しきれず畑の畝間にたまってしまう雨水を地下から流し出そうという試みです。



 畑の水はけ対策を施した後、畑全体に堆肥を散布しました。堆肥は利根川対岸の守谷市にある牧場で大量に作られている牛糞堆肥を搬入。散布量は
10アールあたり3トンとやや多めにしました。この後、何度かトラクターで耕耘した後、土の学校の実習用に区画を作って行きます。2020年度土の学校の第1回講習会は37日・8日、開講に向けて準備大詰めです

投稿日:2019年9月9日 10:46 pm



台風15号、農園始まって以来のものすごい台風でした。以前の台風の被害を全部足し合わせたような被害が引き起こされました。農園の中心部に立っているビニールハウスのわきに作った「夏のすずみ処」はペシャンコにされました。近くの竹林から林の保全をかねて伐りだしてきた竹を組んで作った60㎡ほどの施設ですが、周りに植えたゴーヤ、キュウリ、シカクマメが緑のカーテンになって日陰を作りちょうど良い夏のすずみ処になっていました。枝葉を延ばした分、重さがかかり台風には抵抗できなかったようです。土の学校の講習メニューの一つとして栽培しているシカクマメの方はつるを絡ませるために立てたキュウリ用のアングルが強風でグシャっと曲がってしまいました。



資材の保管庫もやられました。車の通路と並行においてあったはずのユニットハウスが約30度ずれて変な方向を向いています。以前も同じような経験があり、その後少しの風では動かないように周りに鉄の杭を打ったりしていたのですが、到底強風にはかなわなかったようです。利根川側の資材保管用の物置はすぐ下の車の通路に倒れ込み通路を塞ぎました。倒れ方が悪くて天井と床が逆になり床が上を向いた形で、当然中の資材類もひっくり返って中はめちゃめちゃになっているはずです。通路をふさがれては車が通れないので通路の真ん中より端の方へずらしましたが、人の力では全体を動かすのは難しそうなので、抜本対策は少し先にしました。



畑の作物にも大きな影響が出ました。トマトやキュウリ、ゴーヤのために組み立てた支柱はほとんど倒されました。ナス、ピーマン、万願寺トウガラシ、モロヘイヤも軒並み倒されたり斜めに傾いたりしています。ちょうど夏の野菜から秋冬野菜への切り替え時なので、倒されたものは早く撤収して次の秋冬野菜に集中したいです。



秋冬野菜のとっかかりとして今月初めに植え付けたキャベツ、茎ブロッコリーは虫の浸食を防ぐため防虫ネットをかけておいたのですが、ほとんどはがされました。この後植え付ける作物の苗は隣のビニールハウスで育てていたのですが、これもハウスの窓から吹き込む風で傾いたり葉がちぎれたりしていました。




幸い、畑の真ん中に立つ2棟のビニールハウスは無事でした。大きなビニールハウスは「土の学校」の講習会場として使っているので、ちょっとやそっとでは倒れないようにかなりな強度の構造にしています。小さな方のビニールハウスも苗作りなどで使っているのでかなり頑丈な作りにしています。

台風はこのところ毎年のように日本のどこかで大被害をもたらしており、今回はとうとう関東地方に上陸してしまいました。この先も台風が強くなる傾向なら畑の防御態勢も見直さなければならなくなりそうです。

投稿日:2018年7月22日 9:23 pm



 農園に初めて井戸を掘ることにしました。先週畑の中央部にある杉林の下に高さ7メートルのやぐらを立て、そこから地下の水脈をめざして金属のパイプを下して行きます。約40メートル掘り進んで無事、水脈に到達しました。濁った水を吐き出させてきれいな水が出るようになって一応完成なのですが、この後ポンプを使って水をくみ出すには電気が必要です。近くに立っている東京電力の電柱を見つけて、電力を引き込む申請をして許可がとれてから工事です。実際に使えるようになるまでもう少しかかりそうです。



 畑の作物に必要な水は基本的には雨水まかせですが、この夏のように日照りが続くと畑は干上がってしまい、放っておくと作物は枯れてしまいます。特に野菜の種を播いて発芽するまでは土を湿らせておかなければならず、水撒きは欠かせません。土の学校の場合、農家と違って一般市民の野菜作りですから、毎日見張っているわけにもいかず、久しぶりに畑に来てみたら作物がみんな枯れていたといった事態は避けなければなりません。そこでこの時期、大量の水が必要になります。



これまでは近くの農家から水を汲んでいました。200リットルの大きな容器を軽トラに積んで1日何回と運んでは畑の水ために貯めておき、バケツやジョーロで水撒きします。今年は軽トラで運ぶ回数が1日に6-7回にもなりました。昨年の2倍くらいに増えた感じです。原因の一つは雨が降らないため1回あたりの水撒き量が増えたこと。もう一つは体験農園の会員が増えたため水撒きの面積が増えたことです。毎日夕方には水ためを満タンにしておくのですが翌朝にはほとんど使い切ってしまうという状況です。ここまで来るともらい水では限界です。そこで井戸を掘ることになったのです。 

もともと、柏たなか農園の畑は田んぼの上に都会の残土を数メートル載せて作った埋立地です。埋立地に井戸を掘ろうとすると掘ったそばから埋め立てに使った土砂が崩れおちるため井戸は掘れないと言われました。それでも何とかしなければならなくなり井戸掘り業者に相談したところ、杉林の下なら可能ということで井戸掘りに着手してもらいました。 

  井戸掘り業者さんの話では都市の水不足は年々深刻になっているそうです。とくに東京都心などの大きなビルが水の使用を制限されると夏の冷房ができなくなるなど機能がマヒしてしまいそうです。そのため自衛策として井戸の需要が急増しているそうです。都心のビルは道路ギリギリに建てられていて井戸を掘る機械を設置するスペースも確保できないなど、井戸掘りの前にクリアしなければならない課題もあり、大変そうです。農家でも大量に水を必要とする米作りの方には深刻な影響が予想されます。水不足は人々の生活にとって深刻な問題になってきているようです。


投稿日:2018年3月16日 10:56 am



3月に入り順調に伸びるもち麦、5月の収穫に向けて新たに乾燥施設を導入します。柏たなか農園始まって以来の巨額の投資です。昨年末から建屋の補修、電力線の引き込みなどの準備を進め、今週初めから機械の導入を始めました。
乾燥機本体は高さ6m近く、文字通り見上げるほどの大きさですが、近頃はお米を作ってきた農家が次々とやめて行くのでこれらの農家から出る中古の乾燥機を安く入手することは難しくありません。問題は高さ6m近い機械設備を収容する建屋です。更地をコンクリートで固めてその上に鉄骨の建屋を建てるとなるとそれだけで1000万円近くかかってしまいます。どうしようかと悩んでいたところ、農園の近くでやめた農家が乾燥機を入れるつもりで建てた小屋が放置されており、土地ごと借りられることになりました。昨年秋のことでした。小屋はゴミ捨て場になっており、内装も外回りも大分傷んでいましたが年明けからゴミの山を処分し、何とか使えるところまできました。




今月に入り、昨年から申請していた電気が一部使えるようになり、小屋の修復も仕上げることができました。今週初めにまず、乾燥した麦を一時保管するための巨大なじょうごのような形をしたストッカーという設備を小屋の一番奥に設置しました。



それから乾燥機本体の搬入です。入口のシャッターを開けても高さは3m足らずです。ここに6m近い高さの機械をどうやって搬入するのかと見ていましたところ、乾燥機の底から上部まで麦を吹き上げるエントツ部分を切り離し、乾燥機本体も上下に切り離してシャッターをくぐらせ小屋の中で組み立てました。続いてエントツ部分も斜めにしてシャッターをくぐらせ本体にねじ止めします。後は制御用の装置を取り付け、回転部にベルトをはめ込むなどして乾燥機の設置作業も何とかクリアしました。



この後、3月末までに乾燥済みの麦についているゴミを取り除くための籾摺り、石抜き装置、さらに麦粒の大きさをそろえる選別機を導入して今回の設備計画は完了します。



多額の資金を投じ、たくさんの労力を費やしてまで自前の乾燥設備を持つことにした理由は何でしょうか?それはもち麦の品質向上です。
柏たなか農園のもち麦生産は米農家の設備を使わせてもらうことで成り立ってきました。米農家の設備を使えば自前の設備投資をしなくてすみ、経営的にはとても助かります。ところが、委託での生産量が増え、取り扱うもち麦の総量が大きくなるにつれ米農家依存の問題点も露呈してきました。
米農家の乾燥機を使わせてもらうには乾燥機のお掃除をしなければなりません。しかし、米農家も1年中作業日程が立て込んでおり、もち麦の収穫時期に合わせて乾燥機を掃除するための作業時間を割くことは難しく、大概収穫遅れになり、もち麦の品質低下につながります。さらに丁寧にお掃除してももみ殻付きのお米がもち麦に混入するのを防ぎきることができません。これらの品質低下要因を取り除くために乾燥機の導入という決断をしなければならなかったのです。

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