「都市」と「近くの農業・農村」を結ぶ柏たなか農園のブログ

投稿日:2013年1月15日 6:21 pm

新年の最初の仕事は「発酵肥料」です。はじめに油かす、落葉、ヌカなどの素材を合わせた混合物の中にこうじ菌をバラ播き発酵を始めます。発酵すると温度が上昇するので、その都度「切り返し」といって温度の高い部分と低い部分を入れ換えてさらに発酵を進めます。この過程でこうじ菌の他に納豆菌、酵母菌、乳酸菌と多種多様なバクテリアが繁殖し、これらの胞子を大量に含むものが出来上がります。

肥料というより多種多様なバクテリアの胞子を大量に含む混合物といった方が適切かもしれません。「肥料」という言葉を使うと「肥料取締法」の規制対象になってしまうからです。元はといえば、昔働いていた会社の先輩から教えられて作り方を書いた本を購入し、説明を見ながら毎冬作ってきたものです。

先週、素材となる油かすなど200kg近くをビニールハウスの中に積み上げその上にワラを載せ、ムシロで覆い、温度計を立てておきました。1週間近くたち温度計の表示は50℃超まで来ました。昨日の大雪で畑も一面真っ白ですが、発酵肥料のおかげでビニールハウスの中はぽかぽかです。暖かいビニールハウスの中で何回か切り返しをします。全体の重量が200kgとかなりあるので汗だくの重労働です。約1カ月後に出来上がるはずです。

こうして作った発酵肥料はどのような効果があるのでしょうか?多種多様なバクテリアがバランスよく含まれる土壌というのは、特定のバクテリアなどが大繁殖するのを抑制し、植物の根が元気に活動するための環境作りに貢献すると期待できると考えています。といいながら、この話は何となく歯切れが悪いのです。ここのところは科学的な根拠が示されているとはいえないからです。

これまでも農業に革命をもたらすであろう“魔法の薬”が次々と世に送り出されました。「これを振りかけると収量が激増する」、「これを土に混ぜると食物体が見違えるような成長をする」などなど、農家向けの専門誌などにも宣伝が載っていたりします。ただ、その多くが植物体のどの機能にどのように作用するからこのような結果になるといった科学的な根拠が示されないまま、効能だけをアピールしているように見えます。微生物の世界というのはいまなお科学的にとらえるのが難しく、多種多様な“魔法の薬”が出てきても本物かどうか判断できないのです。「見えるものだけを信じてはいけない」ということもあるでしょう。発酵肥料の話をする時の歯切れの悪さもここら辺から来ているのです。