「都市」と「近くの農業・農村」を結ぶ柏たなか農園のブログ

ムギとスイカの良い関係

投稿日:2022年11月11日 9:36 pm



 柏たなか農園の主力作物であるもち麦は晩秋に種まきして翌年春に収穫します。夏から秋にかけての畑を空けておくのはもったいないのでスイカやサツマイモを栽培してきました。なぜスイカやサツマイモ?そこには柏たなか農園独自の戦略がありました。キーワードは「都市型農業」。つくばエクスプレスの開通などで都市化が進んできた千葉県の柏市北部という地理的条件を最大限生かしたビジネス形態をめざした結果です。


 農園の事業は「土の学校」という会員制のサービスからスタートしました。これは野菜を単なる商品として消費者に買ってもらうのではなく、消費者に土の学校の会員になってもらい農園に来て野菜の種まきから収穫までの一連の作業を行い、最後に収穫物を持って帰ってもらうといういわば農家と同じ野菜栽培を体験するサービス型の商品です。このやり方なら野菜を売るために他の農家との熾烈な販売競争をしなくても済むし、収穫までの途中段階を体験でき、好きな時に畑の自然環境と触れ合うことができる--などの付加価値を付けた商品(サービス)として野菜を販売できるので付加価値分だけ収益を上げやすくなるという経営的なメリットがあります。



 このビジネスのキモは野菜を栽培する農業体験をしてみたいと考える人をどれだけ集められるかです。まずはたくさんの市民に知ってもらうために体験農園のことを紹介した会員募集チラシを大量に撒きました。一番近い新興住宅街であるつくばエクスプレス・柏たなか駅周辺の住宅街、少し離れた流山市、野田市、我孫子市などの住宅団地などにも配布しました。このほか市の広報紙などで告知宣伝したり、NHKの野菜作り講座でおなじみの先生にお願いして柏の東京大学ホールで講演会を開催したりもしました。さらに「百聞は一見に如かず」ということで一般市民に農園に来てもらい畑を見て野菜の収穫を体験してもらうイベントをいろいろ開催しました。この収穫体験に使ったのがもち麦の後作で栽培したサツマイモやスイカです。

 

 収穫体験の定番といえば秋の芋ほりです。サツマイモのつるで覆われた畑に入りつるを取り除いた後、土の中の芋を傷つけないようにスコップでそっと掘り進め、ごっそりと掘り上げる芋ほりは大人も夢中にさせます。収穫の後は芋の重さを測ったり、あらかじめ違う品種の焼き芋を作っておいて食べ比べしたりして最後に収穫した芋をお持ち帰りいただきます。




 夏のスイカ取りにも力を入れてきました。スイカの葉で覆われた畑の中からシマシマ模様のスイカの実を探すのが面白く、そのあとスイカの重さや甘さを測ったり、試食してからお持ち帰りといっぱい楽しんでもらうことができます。スイカを買ってきて食べるだけよりもずっと楽しい体験ができます。イベント参加費は安く設定しているので、お持ち帰りいただくスイカだけでも普通のスーパーの価格より安くなる計算で、お得感もたっぷりです。

 

 もちろん芋ほりやスイカ収穫体験は土の学校の実習メニューにも組み込んでいます。土の学校ではサツマイモやスイカの苗植付けから始まり草取りなどの栽培管理を体験してもらいます。最後の収穫作業だけ一般公募した収穫体験の参加者といっしょのイベントを楽しみます。農園のホームページには「都市と農業・農村を結ぶ」というキャッチコピーを載せています。さまざまな農業体験に参加することによって都市の住民に農業・農村との接点を感じてもらうことが農園の役割の一つと考えているのです。

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