「都市」と「近くの農業・農村」を結ぶ柏たなか農園のブログ

投稿日:2015年4月30日 8:54 pm



GW最初の29日は土の学校の春の集い、「サバイバル体験」をテーマに開催しました。サバイバル体験の内容は、柏たなか農園の農場が大災害時の避難場所になったとしたら、という想定で①農園とその周りに自生している食用になる植物を使って料理をする、②できるだけ少ない水で料理を作る、③保存食を食べる--などです。

農園の隣りには竹林があるので、始めは筍煮を作る体験です。竹林がしばらく手入れしていない林なので筍が生えている場所まで、倒れたままの竹を取り除くなどして通路を作るところから始めました。竹林から掘り出した筍は皮がついたままたき火にくべました。筍に含まれる水分を使って煮てしまおうというねらいです。1時間近く焼いてようやく食べられるだけの軟らかさになりました。



もう一つは農園の一番端で落合さんに作ってもらっている畑の周りに生えているノビルを使ってお好み焼きを作る体験です。採ってきたノビルを細かく切り刻み水で溶いた小麦粉に混ぜてフライパンの上で焼くのです。落合さんは自然農法という、雑草をほとんど取らず農薬も肥料も使わずに野菜を栽培するという難しいやり方に挑戦しています。おかげで野草は好きなだけ繁茂しており、ノビルもたくさん採れました。

春の集いの本番が始まる前に体験農園の実習畑の周りを動物防除ネットで囲む作業をしました。畑の作物を野生の動物から守るためです。畑にはウサギ、タヌキ、イタチ、ハクビシンなどがやって来て畑の野菜、特にトウモロコシなど実物野菜を狙ってきます。カラスやキジなど鳥は空から来るので防ぎきれませんが地上からの攻撃を抑えるだけでも大分違います。



すべての作業が終わってようやくみんなで食事です。たき火で焼いた筍、ノビルのお好み焼きと野菜中心のバーベキューなどあまり手をかけず、たくさんの水も使わない料理ばかりです。この他にこの日の参加者が手作りの料理を差し入れしてくれました。こちらの方がおいしかったかもしれません。最後に保存食としてパックごはんをお湯で温めたのですが、おかずらしいおかずもなくご飯は残ってしまいました。サバイバル体験とはいえ、もう少しおいしく食べられるように工夫すべきだったでしょうか?

春のイベントは4年前の大震災と原発事故の記憶をたどるきっかけにしたいと考え毎年「サバイバル体験」をテーマにしてきました。柏たなか農園のある千葉県北西部は原発事故による放射能汚染とそれに伴う風評被害に苦しめられた地域です。今回使った筍も柏市では昨年まで出荷自粛で、今年からようやく安全性が確認され出荷が解禁になったものです。農作物=食料を作る上で畑を汚染から守ることは極めて重要なことであり、さらに汚染された場合に適切な打開策を打つことが大事です。私たちが身をもって体験した環境汚染問題の記憶を風化させてはならない、そういう思いで今年も春のイベントを開催しました。

投稿日:2015年4月15日 9:01 am



3月下旬に出た「常磐線中心主義 ジョーバンセントリズム」という本、積んどくになっていたのを読みだしたら面白くて最後まで読んでしまいました。

常磐線沿線はいうまでもなく20113月の大地震と原発事故、特に原発事故の被害の大きかった地域です。私も茨城県取手市に住み、毎日利根川を渡って千葉県柏市の農場に通っている常磐線沿線住民ですが、未曾有の天災と人災がもたらした現実にどう向き合えばよいのか?いまなおやりきれなさと戸惑いを感じています。

「常磐線中心主義」には常磐線沿線地域の人々がこの現実にどのように向き合ってきたのか、いろいろ紹介されています。住民側からの働きかけで行政とうまく連携して市内全域で放射能除染を実施した柏市の例や、地域の有力産業であった水産加工業を復活させる取り組みの中で地元に誇りを持つことの重要性に気付いたといういわき市の例など、感心させられることがいっぱいあります。

では自分はどう向き合ったらいいのかと考えてしまいます。私自身の農業経営との関わりという点では放射能汚染とその後の風評被害で損失を受けました。これについて東京電力に損害賠償請求もしましたが、申請を受け付けるかどうかの入口ですったもんだした挙句、初年度の賠償金はわずか1700円余りにしかならず、ばかばかしくなってその後の損害賠償請求を止めてしまいました。

取手や柏よりはるかに大きな被害をこうむった原発近接地域ではどうしているのだろうか?現地の報道をテレビで見たりすると、本当はどうやっているのかこの目で確かめてみたい気持ちになります。一方で興味本位で出かけて行ったのでは被災地の方々に失礼だと思い躊躇していました。しかし、「常磐線中心主義」を読んでみて、やはり行くべきだと考えるようになりました。大きな被害をこうむった地域では厳しい現実にどう対応しているのか、たとえ表面的であっても現地の現実に触れることができれば自分がこれからどう対応すべきかのヒントが得られるような気がしてきたからです。

責任編集の立場でこの本を書かれている五十嵐泰正・筑波大准教授は柏駅前の青空市「ての市」(柏たなか農園もときどき出店させてもらっている)などを主催する柏ストリートブレイカーズの代表です。農園の放射線量を計測してくれたり、筑波大の学生さんらを畑に連れてきてくれたりと、軽快なフットワークに感心させられております。今回の「常磐線中心主義」ではほんとに元気もらいました。ついでに本の中で紹介されている音楽CD「常磐DOPE」も買ってしまいました。

 

カテゴリー: 柏たなか 放射能問題