「都市」と「近くの農業・農村」を結ぶ柏たなか農園のブログ

投稿日:2019年5月21日 5:26 pm

 


 もち麦畑は一面紫色に染まり幻想的な景観を作り出しています。今の季節を表すのに麦秋という言葉があります。麦の収穫の時期だからです。2019年産もち麦、間もなく収穫が始まります。ところで「もち麦」ってどういう麦(大麦)でしょうか?「もち麦」と「そうでない麦」はどのように区別されるのでしょうか? 今回はWhat is MOCHIMUGI? の話です。




 麦関係の業界団体の一つに「全国精麦工業協同組合連合会」(全麦連)というのがあります。ここが今年4月に「もち性大麦(はだか麦を含む)とはもち性遺伝子型を有する大麦と定義する」という「もち性大麦業界基準」を公表しました。

 お米にうるち米ともち米があるように穀類にはお米でも麦でもトウモロコシでも、それぞれ「もち」と「うるち」という2つのタイプがあります。食用部分を構成するでんぷんの構造の違いによるもので、その違いは遺伝子によって決定されています。もち性遺伝子型を有する品種が作り出すでんぷんは100%もち性で、もちもちした食感になります。うるち性遺伝子型を持つ品種ではもちもち感は得られません。

 ではどの品種がもち性遺伝子型を有する大麦の品種でしょうか? 全麦連が示したもち性遺伝子型を有する大麦のリストには国産もち麦として10の品種が、外国産としてアメリカ産、カナダ産を合わせて10の品種が掲載されています。柏たなか農園で生産している「ダイシモチ」も国産もち麦の品種の1つとしてリストアップされています。




 ではなぜ全麦連がもち性大麦を他の大麦と区別してリストを公表したのでしょうか?それはもち性大麦ではないけれどもち麦に似た食感が得られるといった判断からもち麦に準ずるものとして販売されている大麦があるからです。このままいくと何が「もち麦」なのかをめぐって混乱を招くおそれもあります。もち性遺伝子型を有するか否かという客観的な判断基準を示すことで混乱を未然に防ぐ狙いがあると思われます。

 スーパーなどで販売されているもち麦は何という品種なのか、印刷された文字が小さくて見づらいかもしれませんが大概表示されています。全麦連が公表したもち麦リストに載った品種です。ただ、外国産のもち麦は品種名まで明示している商品はあまり見かけません。

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投稿日:2019年3月28日 9:20 am



 もち麦の収穫は例年5月末ですが、これまでは春先には在庫がなくなり半年近いブランクが生じ、「申し訳ありません」ばかり言ってきました。今年は今のところ在庫があり、何とか次のもち麦の収穫までつなぐことができそうです。

2018年産もち麦は栽培面積が増えたことで過去最高の収穫量になりました。一方出荷先も増えましたが、需給がちょうどバランス取れるくらいでした。大口の出荷先は東京の東都生協と柏市内に2カ所ある大型の直売所でしたが、昨年から新たに柏市内の有力スーパー、千葉県北西部から一部埼玉県にも出店している地方スーパーなどとも取引が始まりました。増産と取引先拡大によりもち麦の生産と出荷のバランスが取れる状況になり、とりあえず5月の収穫まで切れ目のない「通年出荷」ができる見通しとなりました。

これまで毎年春先には品切れになり、需要家のみなさまには5月の収穫、6月の出荷開始までお待ちいただくのが常でした。そのため、直売所などでは「お一人様○個まで」といった表示をしてくださっているお店もあります。また生協とは年間どれくらいといった数量をあらかじめ決めさせていただき、途中で在庫状況を見ながら出荷数量を微調整するといったやり方をしてきました。こうした生産と販売のすりあわせによって通年販売ができるようになり、ひとまずほっとしています。




2019年産のもち麦はいままさに草丈が大きく伸びているところで、これから穂が出てきます。昨年11月に種まきしてから平年より気温が高い日が多かったため、成長のペースがかなり早まっています。もち麦の生長もさることながら、雑草も同じく温暖化の影響で伸び始めが早く伸び方もじん常ではありません。畑の草取りが大変です。

この分だと収穫期も早くなりそうですが、そのタイミングを計るのが難しく、当分もち麦畑の生育状況から目が離せません。

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投稿日:2018年9月30日 11:51 pm

「柏たなか農園」というと「柏市の田中さんが経営する農園」だと思われることがよくありますが違います。つくばエクスプレスの「柏たなか駅」のすぐ近くにある農園ということで付けた名称です。正式には「株式会社 柏たなか農園」という農業会社です。スタートしたのが20089月、今月でちょうど10周年なのでこれまでの道のりを振り返ってみます。

  私は2007年に会社勤めを卒業しました。知り合いを頼って柏市内で農地を探したところ、市北部の田中地区で耕作放棄地化した約2ヘクタールの畑にたどり着きました。借りるに当たって地元の農家にも参加してもらう形にしたらどうかとアドバイスをいただき、私と地元の農家の共同出資で柏たなか農園を設立、この会社が農地を借りる形にしました。これが後々、事業を進める上で大いに助けになりました。

畑がある柏市北部の田中地区はつくばエクスプレスが通るまでは柏市でも一番の田舎でした。江戸時代には田中藩、明治になって田中村、その後合併して柏市になったという歴史を持つ純農村地帯です。2005年につくばエクスプレスが開通、柏の葉キャンパスと柏たなかの2つの駅ができ、沿線がにわかに都市化して行きました。

柏たなか農園はホームページで「都市と農業、農村を結ぶ」とうたっています。純農村時代の田中地区ではなく、つくばエクスプレス沿線に都市化の波が押し寄せるという新しい環境の中でビジネスを展開して行こうとの思いがあります。

会社設立の翌2009年3月には「体験農園・土の学校」を開講しました。都市住民を対象に家庭菜園での野菜の栽培方法を学んでもらう野菜作り学校です。たなか駅周辺にはすぐにも住宅が建ち並び、新住民が土の学校の講習を受けに殺到してくるだろうとの期待があったのですがその思惑は外れ、周りに住宅が建ち並ぶのはそれから7-8年経ってからでした。それでも柏たなか駅から少し離れた団地や流山市、我孫子市、野田市などからの会員が集まりとりあえず体験農園事業は軌道に乗るかに見えました。

ところが、2011年に東京電力福島原発の事故による放射能汚染とそれに伴う風評被害が首都圏全体に広がりました。中でも柏地域は“汚染度のひどいホットスポット”とされ、農産物の安全性を疑う声が拡散しました。野菜作り教室・土の学校の会員数も激減してしまいました。風評が薄れるとともに会員数は回復しましたが、原発事故が初期の柏たなか農園にとっての大きな痛手となりました。

柏たなか農園が体験農園という、いわば3次産業タイプの事業からスタートしたのは、いきなり販売目的の農産物の生産=1次産業タイプを始めても事業として成り立つか見通せなかったからです。土の学校でさまざまな野菜の栽培を試みながら採算がとれそうな品目を探っていこうと考えました。

有力な栽培品目は意外に早く見つかりました。2010年に千葉大学の柏キャンパスで開講中の社会人講座に出かけた時、受講者の一人が「一度試食してみませんか?」といってもち種の裸麦を持ってきてくれました。お米といっしょに炊いてみるとモチモチして美味しい。いわゆる麦飯(むぎめし)とはまったく違う食感でした。これが「もち麦」との最初の出会いです。麦の種まきは秋です。さっそく種麦を購入し、その年の秋にもち麦栽培を始めました。

調べてみるともち麦はメタボ対策に良いなど健康促進効果が学術的にも検証されており、欧米でも健康食品として評価されていることが分かりました。美味しいだけでなく健康食品としてしっかりした裏付けがあると知り、迷うことなく販路拡大に取り組みました。

とはいえ柏たなか農園の2ヘクタールの畑だけでは生産量に限りがあります。そこで柏たなか農園の出資者の一人である染谷農場の染谷さんに生産委託する形でもち麦の増産に協力してもらいました。染谷農場は経営面積が200ヘクタール近い千葉県有数の大農家です。

2015年ごろから、初めはNHKの番組で、その後民放テレビでも「健康食品・もち麦」がたびたび取り上げられるようになりました。メディアの後押しもあり販路が拡大、ここまでは順調に行くかに見えました。

ところが2017年にもち麦畑がすべて黒穂病に侵され、もち麦生産は壊滅状態に陥りました。約1ヶ月かけて黒穂を抜きまくり2ヘクタールだけ収穫しましたが柏たなか農園のもち麦事業は大きく後退してしまいました。

前年の失敗で経営は苦しい中でしたが、2018年は乾燥機をはじめもち麦関係で経営規模に見合わないほどの多額の設備投資をしました。幸い、2018年産もち麦は順調に生育、収量は元の水準を大きく超えることができました。収量増を受けて夏以後、販売面での失地回復に取り組んでいるところです。

農園スタートからの10年を振り返ると、うまく行きそうになると原発事故や黒穂病といった障害物が現れ、事業が順調だったとはいえません。累積赤字も抱えています。それでもここまでやってこられたのは、会社設立時点で地元農家との共同出資にしたことが大きかったと思います。初期の耕作放棄地状態から畑を起こしてもらったり、不要になったトラクターを安く譲ってもらったり、井戸水を分けてもらったり、竹林の竹を切り出してもらったりと出資者の農家さんにはずいぶんお世話になりました。中でも染谷農場の染谷さんには、黒穂病の発生で危機に陥ったもち麦の生産を助けていただき、主力のもち麦事業を辛うじて継続することができました。

もう一つ忘れてならないのは原発事故後、柏地方が特に放射能汚染度の高いホットスポットとされ農作物などに深刻な被害が及ぶ中で、柏市内の生産者と消費者が集まり「市民が受け入れることのできる安心・安全レベル」をまとめ、実際の計測に基づいて基準以下の農産物を流通できるようにしたことです。このことが契機となり、柏の農産物が柏市内だけでなく全国に受け入れられるようになりました。地域の危機ともいえる事態を打開する糸口となった柏市民の行動には今でも感謝し、また敬服しております。

農業ビジネスに参入してつくづく思うのはビジネスの環境がとても大事だということです。うまく行っている時は環境が暖かいか冷たいかはほとんど気にしなくてもすみます。ところが経営が苦しくなった時、周りの人たちが手をさしのべてくれたなら助かっていたものも、それ見たことかと潰しにかかられたら簡単に破綻してしまいます。この違いは大きいです。この点、千葉県柏市で農業ビジネスに参入できたことはラッキーだったと実感しています。

投稿日:2018年6月23日 7:53 pm

2018年産もち麦の刈り取りから製品化までの作業がやっと一段落、すぐに営業です。20日は東京・品川区にある東京流通センターという大手流通業者が営業拠点などに使っている施設のイベント会場で開催された「地方創成・食の魅力発見商談会」に出展しました。21日はもち麦の最大の出荷先である東都生活協同組合の担当の方に柏たなか農園に来てもらいもち麦畑と生産設備、稼働状況などを見てもらいました。



20日の商談会は全国の第2地銀が音頭を取って、その取引先である食品メーカー、農家などの生産者と需要家との取引の機会を作ってくれるというもの。来場者が大手の流通業者など需要家に限られているので、出店する生産者側にとっては具体的な商談につながりやすいという点が魅力です。事前に商談会のWebサイトに出展者リストと出展内容について取引条件も含めた詳しいデータを載せてくれるので、出展内容を見て目的のブースを訪れそのまま商談に入るという方もかなりいたようです。

柏たなか農園の2018年産もち麦の生産量は2017年産の約4倍です。生産が増えた分を全部とは行きませんが、それでも生産量が増えたことで新規の取引先の開拓が可能になりました。地方創成商談会ではたくさんの名刺をいただき、その一部の方とは商談を始めさせていただいております。やっともち麦の販路拡大に乗り出せたというのが現在の状況です。




21日は最大の出荷先である東都生活協同組合の担当の方が柏たなか農園に来られて、生産体制全体を見てくださいました。もち麦はすでに刈り取った後でしたが、柏たなか農園の畑に加えもち麦を生産委託している先の畑の状況も見てもらいました。今年度から新たに導入した乾燥機と籾すり、選別などの後工程の機械設備、さらに袋詰めの作業を委託している施設などに足を運んでもらいました。担当の方が一番気にしていたのはやはり異物の混入問題で、すべての作業工程でいくつかの改善点を指摘していただきました。

今年の麦刈りは刈り取った後の乾燥・調整のための乾燥機を初めて自社設備として導入しました。機械設備の導入といっても新品など買えるはずもなく、お米を作っている農家からのお下がりです。埃だらけの機械のお掃除からはじめて、とにかく電源スイッチを入れ稼働にこぎつけました。乾燥機は高さが6m近い大きさで処理能力も大きいと思っていたのですが、実際に畑からもち麦の籾を運びこんで乾燥・調整作業をさせてみると処理能力は期待したほどではなく、今年度の収穫期間内では作付したもち麦全部を処理するのは到底無理だとわかり、結局収穫した籾の大半は米農家がもっている大規模な機械設備で処理してもらいました。この先、もち麦の生産量を増やすとしても対応する設備をすべて自社で持つのは難しいということが分かってきました。

カテゴリー: 出荷情報 イベント もち麦

投稿日:2018年5月9日 12:16 pm



 柏たなか農園の主力作物であるもち麦(品種はダイシモチ)の収穫が近づいてきました。穂から先の方に伸びるノゲまで紫色に色づき、畑は幻想的な景観を見せています。





 一番先行しているのが隣りの千葉県野田市船形地区と木間ヶ瀬地区で栽培を委託している畑で、すでに畑の大半が明るい紫色に変わっています。これからもう少し紫色が濃くなり先端が首を曲げたようになると収穫適期です。あと1週間から10日で収穫できそうです。





 柏市内では利根川河川敷で5haあまりの広い畑を使って委託栽培してもらっています。こちらは昨年11月に2度来た台風による川の増水で種播きが遅れたため生育も遅れました。このため現時点では畑はまだうす緑色で一番上がうっすらと紫色になってきたかという段階。それでもスタートの遅れからするとかなり追いついてきたようで、今月末には収穫できそうです。



 一番心配なのが当柏たなか農園の畑で、一部は穂が色づく前に倒伏が始まってしまいました。このまま行くと倒れた麦を起こしながら収穫しなければならなくなり、作業はかなり難航しそうです。

 ここにきて心配なのが梅雨入りが早まりそうなこと。雨が続くとその間に麦が倒れてしまい、最悪の場合収穫できない可能性もあります。出来ることなら6月初めまで天気がもってほしいと祈るような気持ちです。

 昨年は黒穂病が蔓延したため委託先の分も含めて全体の3分の2をつぶさなければならないというつらい思いをしましたが、今年は種の購入段階で対策(種に農薬を粉衣)したので大きな被害にはなりませんでした。それでも4月中ごろから黒穂菌に侵された穂がポツポツと出てきたので何回も畑を廻って黒穂抜きをしました。

 毎年のことですが、何も心配せずにこの時期を過ごすことができるようになるなど夢のまた夢でしかありません。 

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