「都市」と「近くの農業・農村」を結ぶ柏たなか農園のブログ

投稿日:2022年3月2日 12:50 pm

 冬の寒さもゆるみ春を感じさせる陽気になってきました。柏たなか農園の主力作物であるもち麦の畑では2月頭から麦踏みと雑草取りを行い3月1日に追肥をやって一息ついたところです。これから麦は急成長し4月には穂が出始めます。


 昨年10月から堆肥を入れるなど畑を整備しました。11月中旬には元肥を入れ種を播きました。播いてから1週間~10日で芽が出て畑全体が薄緑色になります。年末から年始、寒い時期には地上部の成長速度は遅いです。ではこの時期ただサボっているのかというとそうではありません。地上部の停滞を尻目に地下の根をせっせと伸ばし、気温が上がる春に向けて準備をしていたのです。


そこで迎えた3月は麦が一番成長する時期です。このタイミングで追加の肥料を投じることで成長を促進します。3月の初めに缶コーヒー約1個分の背丈だったのが月末には4~5個分にもなります。1日1日の成長が分かるくらい急速な伸びです。 

 しかし良いことばかりではありません。気温が上がり肥料も投入するなると畑の雑草にも栄養を与え雑草の成長を手助けすることにもなりかねません。あまりに雑草がはびこると収穫時点で雑草の実が大量に混入してもち麦の品質が低下してしまいます。そこで追肥をやる前に畑の雑草を抜きまくります。特にいやなのが麦の根本に根付いてしまう雑草です。これを丹念に取り除きます。今回の草取りで抜き取った雑草はバケツ7-8杯分にもなりました。


 今回の雑草退治で畑の表面、見える所には草が生えていません。このまま最後の収穫まで雑草が出てこなければ良いのですがまだ分かりません。無事収穫にたどり着くまで安心できません。

カテゴリー: 生育情報 柏たなか もち麦

投稿日:2021年12月31日 11:54 pm



 久々のブログですが、この空白の時間は柏たなか農園にとって大変な事態が進行していました。事業の継承問題です。手っ取り早い方法として身近にいる若い人に会社を任せようとしたのですが、結果は失敗でした。農業会社に必要なことは技術と営業ですがそのいずれもきわめて未熟でした。このまま突き進んでもうまくいきそうにないので、この秋のもち麦の種まきは面積を大幅に減らしました。本来なら今頃、畑は若いもち麦の葉の薄緑色で覆われているはずですが、写真のとおり、見えるのは枯れた雑草ばかりです。

 

 柏たなか農園は都市近郊型の農業会社なのではじめは都会の若者でも容易に引き継げると考えたのですが、いざやらせてみるとうまく行きません。例えば農業が好きだといっても小さな家庭菜園を楽しむのと広い農場を経営するのとはまるで違うのです。作物を栽培するため圃場の管理運営も面積規模が違うので同じ感覚ではうまく行きません。できた農産物もロットが大きいだけに販売ルートに乗せるのも大変です。余らせてしまったら大量廃棄という事態も起きかねません。つまり生産に入る前の段階から生産と販売の計画をしっかりと立て計画通り作業を進めなければなりません。農家なら当たり前のことですが、外から見ているだけでは分からないのです。

 

 千葉県柏市北部の耕作放棄地だった畑を再生させるところから柏たなか農園は始まりました。柏市は大都会のように思われますが北部と南部は大農村地帯です。そこでの農業は都市部に近接しているという「地の利」を考えて設立当初、柏市とその周辺に住む都市住民に野菜の栽培技術を教える「体験農園」という事業から始めました。その後主力作物となる「もち麦」の栽培を始めました。今でこそもち麦は広く知られるようになりましたが、当時は知る人も少なく、柏市とその周辺でもち麦を置いてくれる店を探して地道な営業活動をしてきました。2016年ごろから健康食品としてもち麦が注目され一気に全国区に駆け上がり生産が追いつかなくなりました。柏たなか農園も近くの農家に生産委託して生産量を増やしました。しかし常に不足というわけではなく、時に過剰になることもあります。そのたびに収益が上下に振れることになります。

 

 「体験農園」と「もち麦」という収益性の面でも2つの異なるタイプの事業を組み合わせることで会社を安定した成長軌道に乗せようとしてきました。このような経営の大枠がこの一年で崩れてしまいそうになりました。つまり、直接的、間接的に値上げすることによって目先の利益を上げようとしたのです。しかしながら客観情勢は容易に値上げを受け入れてくれるほど甘くはありません。

 

 この秋、柏たなか農園の畑ではもち麦の作付け面積を大幅に減らしました。もち麦の種まきは毎年11月です。種まきに先立ち排水対策、雑草対策、たい肥散布などの準備作業があり、ここから翌年5月の収穫まできめ細かい栽培管理をしなければなりません。素人さんが一連の作業をこなしていけるか、見通しが立ちません。やむなく今年の種まきは見送らざるをえなかったのです。柏たなか農園全体としては委託生産があるのでもち麦の生産量としては前年並みに近い収穫量を確保する計画ですが、自前の畑の生産量が減るのが残念です。事業を続けることの難しさを感じています。

投稿日:2021年7月19日 1:29 pm



柏たなか農園の主力作物といえばもち麦。その主力作物・もち麦を始めたきっかけから今年のもち麦の収穫まで柏たなか農園のもち麦のすべてを紹介するビデオができあがりました。以下のURLです。→ https://youtu.be/c5Bwk9INYuY




制作してくださったのは柏の野菜ソムリエ・亀岡さんとビデオ・クリエータの荻原さん。5月のもち麦収穫直前に柏市北部の柏たなか農園に来て取材してくださいました。もち麦の魅力をとてもよく伝えてくださっており、視聴する人もいっしょに楽しめる内容になっています。私にはできないプロの“ワザ“と感心しております。




ご覧になって納得いただけたならぜひURL https://youtu.be/c5Bwk9INYuY を拡散してくださるようお願いします。これ以上ない「柏たなか農園のもち麦」の宣伝になります。ネット販売チャネル http://www.farmlabo.com/shop.html もよろしくお願いします。

   柏たなか農園・松本



投稿日:2021年5月22日 11:38 pm

 柏たなか農園の人気者だった雄ヤギのアオくんが先週亡くなりました。私にとっては単に愛玩動物を失ったというより、かけがえのない従業員を一人失ったような気持ちです。いつかくる別れとはいえ、農園の風景もすっかりさびしく感じられ、気持ちが落ち込んでいます。

 あっという間でした。亡くなる2日前は少し動きが鈍くなった程度でした。草を食べさせに移動してもついてきたのですが、翌日は小屋の近くで寝そべったまま動こうとせず、そのうちうめき声を漏らすようになりました。最後の日は土曜でしたが獣医の先生に連絡、診てもらうことにしていました。残念ながら先生の到着を待たずに逝ってしまいました。


 大人のヤギが死ぬと家畜保健衛生所という県の機関にすぐ連絡しなければならないと言われました。休日明けの月曜日に連絡したところ家畜保健衛生所の職員がすぐに農園まで来て、アオくんの遺体を載せて行ってくれました。その後、畑の隅で遺体にかぶせておいたワラコモを焼いてアオくんの冥福を祈りました。


ヒマさえあれば農園の草を食べ、時々胃の中のモノを口に戻してかみ直し(ヤギは反芻動物)をやっていたアオくん。近くの道路に犬の散歩をする人が見えるとじっと動かなくなり犬と人が見えなくなるまで警戒態勢を解かないほどの臆病モノ。瞳孔が横長で一見間抜けな印象を与え、それが見るモノに安心感を与えてくれました。だからアオくんはいつも農園の人気者。アオくんほど人に安心感を与えるような存在は考えられないと、いなくなって改めて思います。


 アオくんのいない農園はさびしい。いつもは朝、農園のゲートを開けるとアオくんが「何かいいことないかなー」というような顔をしてヤギ小屋からこちらを見ています。そこで美味しそうな草のある場所に連れて行き杭でつないでおきます。農園から引き上げるときは一人で小屋の前に立ってこちらを見ていました。そのアオくんの姿はもうどこにも見えません。今になってかけがえのない存在だったと分るのです。

 アオくんは9年前の20124月に農園にやってきました。同じ日に生まれた雄の兄弟で身体が大きい兄貴分の方をキイロくん、少し小さくてやせ形の方をアオくんと呼ぶことにしました。キイロくんは農園の主力作物であるもち麦を食べ過ぎて栄養過剰で早くに死んでしまいました。結果的には兄貴に意地悪されてもち麦を十分食べられなかったアオくんが生き延びました。そのアオくんもいなくなり、9年前の2頭は今はもう1頭もいません。いたずら盛りだった2頭のことを静かに思い出しています。
カテゴリー: 土の学校 イベント

投稿日:2021年5月13日 12:29 pm



柏たなか農園のもち麦畑は今、一面紫色に染まり、幻想的な景観を見せています。今年は春先から気温が高めに推移し農産物全体に早く成長する傾向ですが、もち麦も早まる傾向でこの分だと収穫も5月第3週末から第4週になりそうです。同時に梅雨入りも早まるとの予想なのでこれから空模様を見ながら収穫のタイミングを計ることになります。




 もち麦の穂が色づくのは穂についている麦粒の一つ一つがうす緑から紫に変わってゆくと同時に穂先に伸びるノゲも紫になります。この結果、麦畑全体が紫色に覆われ幻想的といわれる風景が見られるようになるのです。




 麦粒が紫色に見えるのは外側の薄皮の部分がうす緑から紫に変わるからです。薄皮の内側にはデンプンが蓄えられるのですが、今の段階はまだ水分量が多く、デンプンを水に溶かしたようなミルク状になっています。このミルクが美味しいらしく畑の端に植わっている麦の穂はほとんどスズメに食われています。この先麦粒に含まれる水分が徐々に減り麦粒が硬くなってきたら収穫のタイミングです。このため毎日、麦粒の水分量を測ります。
 水分量が少なければその分、収穫したあとの麦粒を乾燥させる手間が少なくて済みます。紫色に色づいた麦の穂は初めは上を向いていますが次第に穂首が下向きにカクンと曲がってきます。ほとんどの穂首が下に向いたあたりが収穫の合図です。このまま畑に置いておくとやがて倒伏といって茎ごと倒れてしまいます。倒れた麦を収穫するには一つ一つ起こさなければなりません。しかも倒れて土にまみれた麦は品質的にもよくありません。




  もち麦の収穫時期はだいたい梅雨入りの直前になります。梅雨に入ると麦の穂が乾かず収穫作業がやりにくくなります。今年は九州で早くも梅雨入りとのことで、首都圏の梅雨入りも例年より大幅に早まるとの予想です。梅雨の晴れ間に麦刈りのタイミングがうまく合えばよいのですが。収穫に必要な機械設備の準備も急がなければなりません。

カテゴリー: 生育情報 もち麦 気象異変
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