「都市」と「近くの農業・農村」を結ぶ柏たなか農園のブログ

投稿日:2017年5月10日 5:15 am



 もち麦畑に黒穂病が蔓延して、大変なことになったという話を先月このブログに載せました。その黒穂病に侵された穂を抜き取る作業が昨日5時過ぎに終了しました。作業を始めたのが419日だったのでちょうど3週間でした。この間、GWの中で3日間だけ作業を中断しましたが、それ以外はほぼ毎日朝7時から夕方4時過ぎまで黒穂の抜き取り作業に明け暮れました。体への負担もさることながら今後の経営へのダメージもあり、東京電力福島原発による放射能汚染以来の経営危機と受け止めています。

 黒穂抜き取り作業を始めた419日はもち麦の穂がほぼ頭を出した程度でした。この時点で黒穂に侵された麦は黒い穂が出てくるのですぐ分かります。麦は分げつといって1粒の種が発芽したあと複数の茎をのばします。黒穂病は元になるタネ麦に侵入するので分げつした茎のてっぺんに形成される複数の穂が全員、黒い穂になります。最初の作業は黒い穂をみつけるや、分げつした茎をまとめて株ごと抜き取ります。



 今回黒穂抜き取りに挑んだ畑は委託先の農場の1.6haの畑でした。最初に穂が出てから次々に後続の穂が出てきます。穂が出始めたタイミングを狙って、黒い穂が出てきたら黒穂病に侵されたということですから、分げつした茎をまとめて根元から抜き取り、畑の外に運び出します。結構な重さで作業は基本、中腰です。中腰で何百、何千と持ち麦の黒穂を引き抜く作業は人の腰にかなりの負担がかかります。若い人に手伝ってもらいましたが、作業のしんどさに音を上げていました。

 この時点でまだ穂が出ていないもち麦があります。遅れて出てくるもち麦の黒穂や見落としていた黒穂を抜き取る作業を1.6haの畑でもう一度、展開します。こうして2段階に分けての黒穂抜き取り作業を進めました。合わせて3週間、体は完全に悲鳴を上げていました。それでも黒穂抜き取り作業を続けたのは、前回もここで説明しましたが、ももち麦を育ててくれた需要家の方々への供給をだけは2017年度も継続したいという思いからでした。

 今回の黒穂病の発生は黒穂抜き取り作業による体への負担だけでなく、柏たなか農園の経営という点でも大きな影響を及ぼしています。柏たなか農園は2011年の東電福島原発事故による放射能汚染でもち麦も廃棄しなければならなくなりました。今回の黒穂病で再びもち麦の生産販売を継続できるかどうか、瀬戸際に立たされています。まず、伝染病の発生を未然に防ぐ仕組みです。黒穂病の場合は種子消毒が必須ですが、他の伝染病に対しても適切な予防手段の確認、研究機関への相談窓口の確保なども重要だということが分かりました。農業経営は天候以外にもさまざまなリスクがあるといことを思い知らされました。

投稿日:2017年4月29日 9:16 pm



 もち麦の畑に黒穂病がまん延したため委託を含めて約6haのもち麦畑をつぶさなければならなくなったのですが、黒穂菌が侵入した黒い穂をすべて抜き取れば収穫まで行けるかもしれないとの思いで、先週の月曜日から未来農場の1.6haの麦畑で黒穂の抜き取り作業に突入しました。朝7時から夕方4時過ぎまで、黒い穂を探し腰をかがめて抜き取る作業を続けます。今日で11日目、この間偶然にもほとんど晴天に恵まれ、順調に作業ができたおかげでようやく終着点に近づきました。





 1辺が100m以上あるだだっ広い畑です。機械で種まきした筋に沿って1列100m強の麦を一つ一つ調べ、黒穂になってしまった穂を根元から抜き取ります。一直線にすると約4万メートルにもなります。全部抜き取るには何人日かかるのだろうか?最初に見積もってみた結果、約20人日と予測しました。私と畑を手伝ってくれているO氏と2人がかりで10日間、何とかなるだろうと判断し、黒穂抜き取り作業に突入しましたが、現実はそんなに甘くありません。初日の19日はかなり飛ばしたつもりでしたが終わって見ると4万メートル先のゴールがあまりに遠く、どうしようかと頭を抱えてしまいました。




 急きょ、これまで畑を手伝ってくれたことのある若者らに片っ端から電話をかけ、助力を頼みました。その結果、1日平均1人来てもらうことができました。若い人たちはかがんだ状態で根元から麦を抜き取る作業が腰の負担が大きいため、半日で音を上げてしまいます。黒い穂は黒穂菌の胞子の塊ですが、胞子はプリンタのトナーのようにまっ黒です。黒穂抜き取り作業はその黒い胞子を浴び吸い込むことになるので、鼻や口の中はマスクをしていてもまっ黒になります。特に若い人たちにつらい仕事です。それでも彼らに手伝ってもらったことで何とか11日間、作業を続けることができました。




 この間、飯を食って寝る以外の時間はすべて黒穂の抜き取り作業に費やしました。今日からGWですがそれどころではありません。体力の限りを尽くして、来る日も来る日も黒穂の抜き取りに明け暮れたのはなぜなんだろうか?と考えると、もち麦が全国的な人気商品になるはるか前から柏たなか農園のもち麦を愛用してくださった生協の会員さんや柏市の直売所のお客様への供給だけは続けなければならないという強い思いでした。



 黒穂抜き取り作業によりわずかに残ったもち麦がこの後、順調に育って梅雨の直前に刈り取り、収穫まで行けるかどうか、まだまだ心配なことばかりですが、この先はお天気をあてにするしかありません。もち麦がいまどんな状態になっているのか、畑に行かなくても状況を把握できるようにもち麦畑の隅に「定点観測装置」を設置しました。これから収穫までこの装置から送られてくる画像を見ながら次の手を考えます。


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投稿日:2017年4月19日 9:35 pm



 もち麦畑に裸黒穂病という病気が発生、今年の収穫が厳しくなってきました。もち麦の穂は4月のはじめごろから次々と出てきます。穂の先にノゲが飛び出しその後にまだ熟していない麦粒が見えてきます。ところが、麦粒が見えるはずの場所にところどころ黒い穂が現れました。麦粒の代わりに病原菌である黒穂菌の胞子がびっしり詰まった塊です。収穫量が減少するだけでなく、胞子が飛び散り、収穫時にもち麦の麦粒に付着することによって次世代のもち麦に広がりさらに被害を拡大することになります。被害を抑える対策が必要です。

 対策としてもち麦の大半を収穫せずに畑に立ったままの状態でトラクターですき込んでしまいました。ごく一部、次々と出てくる穂の中から病気に侵された黒い穂だけを抜き取り土に埋めて処分しています。黒穂を抜き取る作業は人手でしかできないので作業量が限られます。作業量の限界を超える分はすき込んで処分するしかありませんでした。

 

 残った畑の中で何とか収穫に持って行けるよう、黒い穂を見つけては抜き取り、バケツなどに入れて畑の外に運び出します。抜き取ってはバケツに入れ、バケツがいっぱいになると外へ運び出す--これを延々と繰り返します。麦畑を踏み荒らすことになりますが構っていられません。広ーい畑の全体を見渡すとやる気を失うので周りの黒い穂だけに目を向けてひたすら抜き取って行きます。麦の穂は次々と出てくるので一度抜き取っただけではだめで何回も繰り返し抜き取り作業を行います。

 もっぱら人手に頼る困難な作業で得られる収穫といえば、黒穂病が発生しなければ得られたであろう収量よりはるかに少なく、抜き取り作業による疲労感ばかりが募ります。それでも収量がゼロになるよりはましだと考えて黙々と続けるしかありません。5月の連休まで作業が続きそうです。



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投稿日:2017年3月21日 8:55 pm

6年前の今日、3月21日は柏市を含む千葉県北西部、茨城県南部に大量の放射性物質を含む雨が降り注ぎました。東京電力の福島第1原子力発電所の核燃料がコントロールできなくなり膨大な放射性物質が外部に放出され、放射性物質を含む雨雲が東京方面に向かう途中でばらまいて行きました。



 この年、柏たなか農園では「もち麦」の生産に本格的に乗り出していました。もち麦は3月が一番の成長期にあたり、月初めに缶コーヒー1個分の背丈が月末には4個分にもなります。その成長期に大量の放射性物質を含む雨が降り注いだのですからたまりません。思い切り吸い込んでしまいました。収穫からしばらくして出た測定結果は規制基準値にかなり近い数値を示していました。この年のもち麦は結局、全量廃棄しなければならなくなりました。
 その後、柏市内では放射能汚染問題に正面から取り組むボランティアが立ち上がり、柏たなか農園の畑も全地点、放射線量を調べてくれました。柏市も汚染レベルの高い場所の土を除去して汚染されていない土に入れ換えるなどの作業をしてくれました。これらの対策の結果、翌年からは放射線量は高精度の線量計で計っても「検出せず」へと変わり、もち麦の生産も再開できました。もちろん、放射能検査では全く問題ありませんでした。
 残念だったのは放射能検査で「問題なし」となっても千葉県北西部、茨城県南部の農産物がしばらくの間、敬遠されがちだったということです。いわゆる“風評被害”です。柏市では農産物の生産者と消費者と専門家が「安全・安心の柏産柏消」円卓会議という市民の自主的な活動を立ち上げました。市内の畑の汚染状況を調べ尽くし、汚染された土壌を入れ替えるなどの対策を打つ中から「みんなが安心できる放射線レベル」を設定するところまでこぎつけました。市民の活動が大きな力となって風評は払拭されて行ったのです。



 あれから6年、柏たなか農園の3月はまさにもち麦の急成長期です。このブログで何度か取り上げましたが、全国的な健康食ブームが追い風になって需要も急増しています。この先、もち麦が順調に育って需要増に応えられるだけの収量が得られるようがんばります。


投稿日:2017年2月17日 10:54 pm

 15日から今日まで3日間、千葉市の幕張メッセで開催された「スーパーマーケットトレードショー」(SMTS)に出展、「千葉県柏のもち麦」を売り込みまくりました。SMTSは食品を中心とするスーパーの取り扱い商品を扱うメーカーなどがスーパーのバイヤー、卸業者らに売り込む商談会で、昨年に続き「地域資源活用の会」の枠の中で出展させてもらいました。柏たなか農園が売り込みに行ったのは今年5月に収穫、6月から出荷する2017年産のもち麦です。結果は、柏たなか農園の2017年産もち麦は全収穫量を合わせても間に合わないほどのたくさんの引き合いをいただき、ひとまず成功したといえそうです。SMTSでの引き合いの強さから予想すると、柏たなか農園だけでなく全国的に「2017年産国産もち麦」は収穫前にもかかわらず供給不足の様相になってきているように感じました。

 

 昨年5月に収穫した2016年産のもち麦は、輸入品も含めてずっと供給不足が続いていました。春先からテレビ放送でもち麦の健康効果が繰り返し取り上げられ、一気に知名度が上がったためです。しかし昨年から続くもち麦人気は一過性のものとは思っていません。というのは、柏たなか農園のある千葉県柏市ではずっと前からもち麦を入れたごはん=もち麦ごはんを食べて継続的にもち麦を購入してくれるリピーター客が定着し、その後も増え続けているとみられるからです。テレビ放送がきっかけになってもち麦はいきなり全国区になっていまい、柏市と同じような現象が全国に広がると考えられるます。2017年については輸入量がどこまで増えるかにもよりますが、国産もち麦の供給不足は当分解消されそうにありません。そういう中での商談会、引き合い殺到も当然と言えるかもしれません。

 

 昨年も柏たなか農園はSMTSにもち麦を出展(千葉市ではなく東京のビッグサイトで開催)したのですが、残念ながらバイヤーや卸業者らに関心を持ってもらうことができず、商談といえるほどの商談にはなりませんでした。テレビ放送を機会に全国的な需要の急拡大を確認できる前の段階で、バイヤー、卸業者らに理解してもらうことは困難だったという言い訳もでてきそうですが、私自身としてはちょっと納得できないところがあります。昨年SMTSが開かれた時点でも、千葉県柏市でのもち麦需要の強さは実感できていたわけで、このことをデータとして示すことによってバイヤー、卸業者らの関心を引き付けることはできたはずだからです。

 SMTSの後も各地で商談会が開かれる予定ですが、恐らく2017年産の国産もち麦の供給不足は解消されないでしょう。農家としては供給過剰で農産物価格が暴落するのもつらいですが、需要にこたえられないのもつらいものがあります。農産物をうまく流通ルートに乗せて行き、需要にこたえてゆくにはそれなりの知恵も技術も必要でしょう。17日の午後4時、SMTSの会場に蛍の光の音楽が流れた時には、3日間展示棚の前に立ち続けた体が疲労の極に達していました。

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