「都市」と「近くの農業・農村」を結ぶ柏たなか農園のブログ
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投稿日:2016年1月31日 9:56 pm
柏の野菜だけでキムチ漬けを作ろうという主旨で毎冬、柏キムチ講習会を開催してきたのですが、なぜか参加者の関心が高いのがキムチに使う“柏たなか農園特製のイカの塩辛”、塩は使わず味噌を使っているので「みそ辛」といった方がいいのかもしれません。塩の代わりに味噌を使っているので味はしょっぱくなくマイルド、どんぶり1杯でも食べられます。作り方に特別なことはないのですが、リクエストが多いのでここで紹介します。
材料はイカと味噌だけ。イカは大型の生するめイカ、体の表面の色が退色していない新鮮なものに限ります。味噌は本来の強さのあるもの、市販のものより味噌作り講座などで教えられるものがお勧め。理由はこの後説明して行きます。
イカは大きくて表面が黒光りしているもの。鮮度が落ちると茶褐色から白へと色が抜けてくるのですぐにわかります。
イカの外套の中に指を入れてワタの部分をていねいに抜き取ります。いっしょにくっついている10本の足を切り離し、ワタだけどんぶりの底に置きます。どんぶりには予め味噌をスプーンで2杯くらい入れておきます。ワタをていねいにつぶして味噌と混ぜ合わせ、タレを作ります。
ワタ以外に外套の中に残っているものはすべて取り除いて捨てます。1本だけ骨のようなものがてっぺんまで貫通しています。これも引き抜くように取り除きます。
外套の先のミミと裾の部分をを包丁で切り落とします。外套の上端から裾まで包丁で1本の切れ目を入れ、そこから皮を剥きます。この時、黒光りしている皮はすーっと剥けるのですが、鮮度が落ちて白くなった皮の部分は簡単にははがせません。
皮をきれいにはがしたら幅5~8mm、長さ2cm程度に切り刻みます。外套以外では、足の中でも特に長い2本の足とか体の真ん中についているトンビといわれる部分とか、どこまで入れるかはお好みでよいと思います。
これらをどんぶりの中にそっくり移し、先に作っておいたタレとよく混ぜます。これで出来上がり。少しの時間、ねかせておくと味がよく浸み込みます。
イカの塩辛といえばイカのワタに塩を振りかけたものをタレにして使うのが一般的ですが、塩ではなく味噌を使うことでイカの臭みを抑えることができます。
生イカを熱処理せずに食用にする時の課題はまずイカの臭みを取り除くこと。そこで塩を大量に振りかけたり、香辛料をかけたり、いろいろとトライされていますが、味噌を使うことで課題は一気に解決します。柏たなか農園のイカのみそ辛は味噌を使うことでイカの臭みを抑え込んでいるのです。ということはイカの臭みを抑えることができるかどうかが味噌選びのとても重要なポイントになります。
食料買い出しのたびに食料品店の味噌コーナーが気になります。「おいしいかどうか」ではなく「イカの臭みを抑える力があるかどうか」が気になるのです。今までとは違う観点から味噌を見直してみてはいかがですか?
2月6日10時から柏駅前のアミュゼ柏で今シーズン最後の柏キムチ講習会を開催します。詳細は「お知らせ欄」をご覧ください。
投稿日:2016年1月21日 10:51 pm
柏たなか農園の魅力の一つは農村ならではの景観だと思います。南北に細長~い畑の東側は水路をはさんで背の高い雑木林と竹林、野鳥も多数生息しています。西南は少し高くなったとなりの農家の畑があり、夏は杉の木立が唯一の日陰を作ってくれます。北側は広大な利根川遊水地を見下ろし、対岸の茨城県側には筑波山が大きく横たわっています。農園の畑も春にはもち麦が実り紫色の幻想的な景色を見せてくれるなど魅力いっぱいです。「この景観、使えますよ」――去年秋、一人の若者が畑を訪ねてきてこういいました。その若者は「地元の人に案内してもらう旅」をTABICAというサイトで紹介する仕事をしているという。農園の景観は旅のネタにしてもらう価値がありそうだということで、彼の話に乗りました。
まず「キムチと焼き芋を楽しむ旅」という企画を載せてもらいましたが12月も押し迫ってからだったこともあり「申し込みなし」で残念ながら中止。TABICAのサイト以外にほとんど告知なしだったので無理だったようです。と思っていたら年明けに「参加者3人、1月10日に開催してほしい」という日程決め打ちのリクエストが入ってきました。急な話で戸惑ったのですが、リクエストした人が「東京・新宿に住んでいる」と聞き、新宿は私の故郷でもあるので急きょ開催することにしてしまいました。もちろん告知の時間などないので参加者はリクエストしてきた3人と、土の学校の会員さんでキムチに興味ありという方お一人に声かけして計4人。
当日やってきたのは大学時代の友人同士という3人の「リケジョ」。そのうち一人が新宿の住人で、他の2人は埼玉県と岐阜県から。友人同士誘い合ってはるばる千葉県北西部地方に来てくれたというわけでした。
最初に畑に案内してハクサイを収穫してもらいました。広い農園の一角にあるハクサイ畑で包丁を使ってハクサイを収穫します。外側の葉は虫に食われているのでばさばさ切り落します。ハクサイの葉をよく見るとシンクイムシやヨトウムシなどいっぱいいますがさすがリケジョ、全然こわがりません。
その後ハクサイキムチの漬け込み講習を受講してもらいました。理系の才媛だけあって、まるで理科の実験をやっているようにハクサイとキムチの漬け込み作業をテキパキと、時々先走りし過ぎで順序を間違えたりしながら進めて行きます。漬け込みの際、キムチ漬けの素になる発酵バクテリアの働きを良くするためにいろいろな工夫を仕込んでおくのですが、その作業の一つ一つがどのような意味を持つのかといった説明をする時の理解の早さに感心しました。
畑に来て彼女らが一様に感動してくれたのが柏たなか農園の田舎らしさ、そして他に何もないという開放感でした。やはり畑の景観は旅のネタになるようです。
昨年はつくばエクスプレス・柏たなか駅の隣りの柏の葉キャンパス駅周辺のマンションの住人らがバスツアーで農園を見学に来ました。来年柏たなか駅のそばに建つ予定のマンションンの売り込みを担当する人から農園の写真をパンフレットに掲載できないかという相談もありました。やはり農村には都会では見ることのできない景観の魅力があります。今年も農村の景観を楽しんでももらえる企画をやってみようとあれこれ考え中です。
投稿日:2015年12月18日 12:10 pm
毎年冬に開催してきたキムチ漬けを作る会、今シーズンはできないかもしれないと一時、心配な状況になっていました。キムチ漬けの素になる発酵バクテリアを販売する業者がいなくなってしまったからです。このバクテリアは「HS-1」という乳酸菌の一種で、茨城県の工業技術センターがキムチからの分離培養に成功したものです。このHS-1の原液を使って産業用、一般用の販売が広く行われるようになりました。ところが、先月、いくつかの販売元に問い合わせたところ全ての業者が「個人用には販売しておりません」と断ってきました。そこで以前知り合った元研究員の方に無理をお願いしてHS-1の原液を1リットル作ってもらい、何とか今シーズンのキムチ作りの会を開催するめどがつきました。大事なHS-1は小さな容器に小分けして大事に保存しています。
漬けものは発酵食品ですから発酵させるためのバクテリアが必要です。キムチ漬けはHS-1というバクテリアが働いてキムチが漬かって行くのだそうです。韓国などで作られている従来のキムチ漬けはHS-1が多くいそうな場所にキムチ漬けの材料であるハクサイはじめ多種類の野菜を置いておくことで自然にキムチ漬けができてゆくという製法でした。ここではHS-1が他のバクテリア=雑菌と競争する中で、HS-1だけが勝ち残れるように繁殖条件を整えることが重要になります。漬け込む場所や温度などによってHS-1の繁殖条件は微妙に変わってくるので、韓国の家庭の主婦らの漬け込み技術がものを言う世界だったのです。半面、経験の浅い人がキムチ漬けを作ろうとすると、HS-1が他の雑菌に負けて失敗=漬けものが腐ってしまうといこともひんぱんに起こりうるのです。
HS-1が分離培養されるようになってからは、はじめから材料となる野菜にHS-1を大量に吹きかけるなどして、他の雑菌が広がる前にHS-1を繁殖させることができるようになりました。HS-1漬けにいろいろな野菜、魚介類などを加えることで、経験のあるなしに関わらず失敗のないキムチ漬けができます。HS-1の原液さえあれば誰でも簡単にキムチ漬けを作れるようになりました。
そこでこのHS-1を使って、柏たなか農園の地元である千葉県柏地方の野菜を材料にした「柏キムチ」を作る会をここ数年開いてきたのですが、素になるHS-1が入手できなければ「柏キムチ」を作ることができません。それで一時は「柏キムチの会」の開催が危ぶまれる事態にもなりました。
HS-1が入手できなくなった原因は簡単です。茨城県工業技術センターから原液を譲り受けて培養し市販していた業者が「採算が取れない」との理由で販売を中止してしまったからです。HS-1の最大の需要家はキムチ漬けを製造販売している漬物業者ですが、彼らはHS-1原液を自社内で培養することができるので最初に原液を購入するだけで、販売するキムチ漬けに必要なHS-1の全量を購入する必要はないのです。漬物業者への最初の原液販売が一巡すると、後は原液を培養することができない個人の需要だけになってしまいます。それでも自分でキムチを作ろうという消費者が多数いるなら個人用の需要だけでビジネスになるかもしれませんが、日本の一般家庭でキムチ作りが普及している状況ではありません。というわけでHS-1は2014年までで一般向けの市場からほぼ消え去ってしまったのです。
HS-1の市販品消滅は、漬け物などに使う微生物の供給体制を作り上げることのむずかしさを物語っています。せっかく簡単にキムチ漬けを作ることができるバクテリア=HS-1が抽出されたのに、HS-1を大量に必要とするプロの漬け物業者は自前で培養できてしまうので、大口の需要家にはなりません。一方、一般家庭の需要はあまりに小口で多少単価を高くしても供給側としては採算がとれそうもありません。その結果、誰でも簡単にキムチを作れる技術があるのに必要なキムチ漬けの素=HS-1が市販されないためにその技術を一般家庭で利用することができないという残念な事態が引き起こされているのです。
それでも今シーズンは研究センター関係者を通じて何とかHS-1を入手し「柏キムチの会」を開催できる見通しとなりました。12月、1月、2月と3ヵ月にわたって開催することにしており、第1回目は12月23日に予定しています。参加条件など「柏たなか農園のホームページのお知らせ欄」に掲載します。もちろん柏地方に住んでおられなくても参加はできます。たくさんの方のご参加をお待ちしております。
投稿日:2015年11月20日 9:31 pm
柏たなか農園の主力作物であるもち麦の種播きがほぼ終了、半年後の収穫を待つばかりです。今年の種播きは10月中に堆肥入れを終わらせていたのでその後の作業は気分的にも少しゆとりを持てました。同じ作業量でも追われるばかりというのと少しでもゆとりがあるのとでは肉体的にも精神的にも負担感が違います。
麦の発芽は早いです。最初に播いたのが12日でしたが5日後にはほとんど発芽していました。雨降りの後、黒に近い濃い茶色の畑に一面、発芽したばかりの麦が角を立てているように見えます。これから畑の表面がうすい緑色に覆われますが、冬は背丈があまり伸びず、しばらく地下の根を広げていきます。
利根川の堤防側にある体験農園の自由区画の端には皇帝ダリアが植わっています。高さ2メートルを超すほどの草丈の頂点にいまちょうど薄紫色の花を咲かせているところです。この時期、周りはほとんど枯れ草ばかりという時に、まさに孤高に立つといった観があります。
投稿日:2015年10月29日 10:44 pm
11月中ごろのもち麦種播きに向けて最大の課題、堆肥の撒布が終わりました。とはいっても今年は若い人に作業をすべてお願いしてしまいました。作業日数はわずか5日間、さすがです。
堆肥を畑に入れる作業は専用機械があれば簡単なのですが、機械なしでやるのは大変です。まずスコップを使って堆肥を軽トラの荷台に積み上げます。軽トラ1ぱいで約300kg、スコップ1回で1kgとして300回スコップを上げ下げすることになります。10アール(1000㎡)あたり2トンの堆肥を入れたとして軽トラで約7はい、もち麦畑は合わせて80アールあるので堆肥を撒き終わるまでにスコップを1万6000回も上げ下げする計算になります。
手首も腕も腰も痛くなるし、撒いたはずの堆肥が風にとばされ戻ってきて自分の顔にあたることもあります。作業終了後にはなをかむと鼻の穴についた堆肥混じりの土埃でティシューに黒い粘液がべったりつきます。この作業が年間の農作業で一番体への負担が大きいと思います。昨年までは一人でやることもあったのですが、今年は無理しないことにしました。
堆肥撒布の前の準備も楽ではありません。まず夏の間、伸び放題だった雑草を除草剤と刈払い機で取り除きます。2~3週間で畑が枯れ草で覆われた状態になります。そこではじめてトラクターを使って耕うんできるようになります。
堆肥は利根川を挟んで対岸の守谷市にある畜産団地から運んできます。団地では約1000頭の乳牛を飼っており、牛たちの排泄物を使って牛フン堆肥を作っているのです。この堆肥をダンプで畑まで運んできます。
堆肥工場は畑から直線距離で約3km、“目と鼻の先“に見えますが、間にある利根川を渡るの橋が近くにないので、遠くの橋を渡って行き来すると片道20kmにもなります。
1日5往復して畑に運び込んだ堆肥は約15トンにもなります。これを畑の隅に積み上げておいたのですが、今回の撒布でこれらの堆肥をほぼ使い切りました。
大変な重労働であるため、一度作業を他の人にお願いしてしまうと来年以降、再び自分一人で堆肥撒布の作業をやろうという気は起きなくなるでしょう。堆肥撒布が片付きとにかくほっとしています。