「都市」と「近くの農業・農村」を結ぶ柏たなか農園のブログ

投稿日:2015年5月10日 8:29 am



 柏たなか農園の主力作物、もち麦が淡い紫に色づき始めました。もち麦は穀粒がポリフェノールの紫色、穀粒の先端に伸びるノゲも紫なので穂全体も紫色になります。これから穂が急速に紫に変わり、今月後半には畑全体が紫色の幻想的な風景になります。

 



 
6月に入り梅雨に入るころになるともち麦は熟し倒伏し始めます。こうなると収穫しづらくなるので梅雨いりの直前、5月末から6月初めにかけて刈り取り作業をします。梅雨入りが早いのか遅いのか、これから毎日、梅雨前線の動きを見ながら収穫のタイミングを測ります。

 もち麦畑の幻想的な風景を見ながらもち麦の収穫をしてもらう「2015年産もち麦収穫体験」を530日、31日に開催することにしました。詳細はこのサイトのトップページのお知らせ欄に載せています。

 2015年産もち麦は昨年11月の種播きの段階でトラクターが壊れてしまい出足から躓きました。春になって雑草取りなど挽回策に取り組んだ結果、徐々に回復しており、6月初めにかけてよい天気が続けば2014年度の実績に比べ大幅減収にはならない見通しです。

 もち麦の収穫を待っていろいろな作業が一気に動き出します。新もち麦の乾燥、調整、籾摺り、選別を経て袋詰めしたものの出荷が始まります。麦の刈り跡にはスイカやカボチャの苗を植付けます。体験農園も春夏野菜の収穫がつづき、柏たなか農園は一番忙しい時期を迎えます。

投稿日:2015年4月30日 8:54 pm



GW最初の29日は土の学校の春の集い、「サバイバル体験」をテーマに開催しました。サバイバル体験の内容は、柏たなか農園の農場が大災害時の避難場所になったとしたら、という想定で①農園とその周りに自生している食用になる植物を使って料理をする、②できるだけ少ない水で料理を作る、③保存食を食べる--などです。

農園の隣りには竹林があるので、始めは筍煮を作る体験です。竹林がしばらく手入れしていない林なので筍が生えている場所まで、倒れたままの竹を取り除くなどして通路を作るところから始めました。竹林から掘り出した筍は皮がついたままたき火にくべました。筍に含まれる水分を使って煮てしまおうというねらいです。1時間近く焼いてようやく食べられるだけの軟らかさになりました。



もう一つは農園の一番端で落合さんに作ってもらっている畑の周りに生えているノビルを使ってお好み焼きを作る体験です。採ってきたノビルを細かく切り刻み水で溶いた小麦粉に混ぜてフライパンの上で焼くのです。落合さんは自然農法という、雑草をほとんど取らず農薬も肥料も使わずに野菜を栽培するという難しいやり方に挑戦しています。おかげで野草は好きなだけ繁茂しており、ノビルもたくさん採れました。

春の集いの本番が始まる前に体験農園の実習畑の周りを動物防除ネットで囲む作業をしました。畑の作物を野生の動物から守るためです。畑にはウサギ、タヌキ、イタチ、ハクビシンなどがやって来て畑の野菜、特にトウモロコシなど実物野菜を狙ってきます。カラスやキジなど鳥は空から来るので防ぎきれませんが地上からの攻撃を抑えるだけでも大分違います。



すべての作業が終わってようやくみんなで食事です。たき火で焼いた筍、ノビルのお好み焼きと野菜中心のバーベキューなどあまり手をかけず、たくさんの水も使わない料理ばかりです。この他にこの日の参加者が手作りの料理を差し入れしてくれました。こちらの方がおいしかったかもしれません。最後に保存食としてパックごはんをお湯で温めたのですが、おかずらしいおかずもなくご飯は残ってしまいました。サバイバル体験とはいえ、もう少しおいしく食べられるように工夫すべきだったでしょうか?

春のイベントは4年前の大震災と原発事故の記憶をたどるきっかけにしたいと考え毎年「サバイバル体験」をテーマにしてきました。柏たなか農園のある千葉県北西部は原発事故による放射能汚染とそれに伴う風評被害に苦しめられた地域です。今回使った筍も柏市では昨年まで出荷自粛で、今年からようやく安全性が確認され出荷が解禁になったものです。農作物=食料を作る上で畑を汚染から守ることは極めて重要なことであり、さらに汚染された場合に適切な打開策を打つことが大事です。私たちが身をもって体験した環境汚染問題の記憶を風化させてはならない、そういう思いで今年も春のイベントを開催しました。

投稿日:2015年4月15日 9:01 am



3月下旬に出た「常磐線中心主義 ジョーバンセントリズム」という本、積んどくになっていたのを読みだしたら面白くて最後まで読んでしまいました。

常磐線沿線はいうまでもなく20113月の大地震と原発事故、特に原発事故の被害の大きかった地域です。私も茨城県取手市に住み、毎日利根川を渡って千葉県柏市の農場に通っている常磐線沿線住民ですが、未曾有の天災と人災がもたらした現実にどう向き合えばよいのか?いまなおやりきれなさと戸惑いを感じています。

「常磐線中心主義」には常磐線沿線地域の人々がこの現実にどのように向き合ってきたのか、いろいろ紹介されています。住民側からの働きかけで行政とうまく連携して市内全域で放射能除染を実施した柏市の例や、地域の有力産業であった水産加工業を復活させる取り組みの中で地元に誇りを持つことの重要性に気付いたといういわき市の例など、感心させられることがいっぱいあります。

では自分はどう向き合ったらいいのかと考えてしまいます。私自身の農業経営との関わりという点では放射能汚染とその後の風評被害で損失を受けました。これについて東京電力に損害賠償請求もしましたが、申請を受け付けるかどうかの入口ですったもんだした挙句、初年度の賠償金はわずか1700円余りにしかならず、ばかばかしくなってその後の損害賠償請求を止めてしまいました。

取手や柏よりはるかに大きな被害をこうむった原発近接地域ではどうしているのだろうか?現地の報道をテレビで見たりすると、本当はどうやっているのかこの目で確かめてみたい気持ちになります。一方で興味本位で出かけて行ったのでは被災地の方々に失礼だと思い躊躇していました。しかし、「常磐線中心主義」を読んでみて、やはり行くべきだと考えるようになりました。大きな被害をこうむった地域では厳しい現実にどう対応しているのか、たとえ表面的であっても現地の現実に触れることができれば自分がこれからどう対応すべきかのヒントが得られるような気がしてきたからです。

責任編集の立場でこの本を書かれている五十嵐泰正・筑波大准教授は柏駅前の青空市「ての市」(柏たなか農園もときどき出店させてもらっている)などを主催する柏ストリートブレイカーズの代表です。農園の放射線量を計測してくれたり、筑波大の学生さんらを畑に連れてきてくれたりと、軽快なフットワークに感心させられております。今回の「常磐線中心主義」ではほんとに元気もらいました。ついでに本の中で紹介されている音楽CD「常磐DOPE」も買ってしまいました。

 

カテゴリー: 柏たなか 放射能問題

投稿日:2015年3月25日 11:41 pm



 不安に思っていたことがついに現実のものとなってしまいました。柏たなか農園の2015年産もち麦の生育が思わしくないのです。3月は麦が一番伸びる時期です。いつもの年なら3月初めに缶コーヒー1本分もなかったもち麦の背丈が月末には缶コーヒー4本分にもなります。今頃はもち麦の緑の葉が伸びてほとんどすき間がないほどもち麦で覆われます。ところが今年は3月も終わろうとしているのにもち麦畑はすき間だらけです。原因は種播き後の畑をトラクターで耕うんしてタネと土を混ぜる作業がうまく行かなかったためと思われます。

 トラクターをはじめ農業機械にかける費用はできるだけ抑えてきました。農産物の売り上げがわずかしかないのに高額の農業機械を購入したら到底収支を償うことはできないからです。そこでヤフオクなどを使って安い農業機械を購入し、壊れたらまたネットで探すといったやり方を繰り返してきました。
 安く購入すれば当然リスクもあります。オイルや水が漏れていたり、ロータリーの上げ下げがうまく作動しなかったり--などあって、購入直後にそこそこの修理をしなければなりませんでした。それでもだましだまし運転して何とかしのいできました。ところが一昨年購入した25馬力の中古トラクターは度を超えていました。一昨年11月のもち麦の種播きはしのいだのですが、昨年の種播きではついにロータリー部分がうまく作動しなかったようです。今年に入ってから農業機械メーカーの営業担当者に診てもらったところ「修復不能」と宣告されてしまいました。2シーズン持たなかったのです。

 柏たなか農園のもち麦の生産は現在2カ所で行っています。利根川堤防に面した一段高いところにある柏たなか農園の農場と利根川堤防内の未来農場です。未来農場は生産委託という形でもち麦を作ってもらっており、今日時点で順調に生育しております。この未来農場への生産委託があるので2015年産もち麦は販売ができないといった事態は避けられそうですが、それでも生産量が予定数量を割り込むのは必至の情勢です。
 2015年度の土の学校の実習畑作りは2月に作業をしなければならず、この時はトラクターによる耕うんだけは近所の農家さんにおねがいしました。しかし、このままずうーっと近所の農家さんのトラクターをあてにするわけにはいかないので再び中古のトラクターを購入することにしました。農園の収支からするとかなりの負担ですがやむなしです。新品の農業機械を現金正価で買うのは簡単ですが、それで柏たなか農園の経営が成り立つとは思えません。リスクがあると分かっていても中古の農業機械を見つけてくるしかないのです。



投稿日:2015年3月8日 8:46 pm



 体験農園「土の学校」の2015年度が37日、8日にスタートしました。初回は約30㎡の実習畑に長さ約3mの畝を7本立てるところから始めるのですが、あいにくの雨模様の中で畝間の土を畝に移す作業になってしまいました。特に7日は昼前後が雨のピークとなり、この日受講した会員のみなさんはずぶぬれになりながら最初のハードルを突破。お疲れさまでした。


それでも畝を作らないことには始まりません。毎年3月は雨降りの日が多く、時々強い風も吹くので体験農園が平穏無事にスタートできる年は少ないのですが、今年も雨雲につかまってしまいました。来年1月までの11ヵ月間、空模様とにらめっこしながら土の学校での野菜作りを進めて行きます。



毎年のこととはいえ、3月の天気には苦しめられます。今年は講習会当日だけでなく、その前の準備段階でも3月の雨にたたられました。会員の数が今年は1.5倍に増えたので昨年までの実習畑では足りなくなり、新たに利根川に近い麦畑の一部をつぶして実習畑にしました。その分、作業量も増えたのに雨で準備作業がはかどりません。最初に畑に堆肥を入れて耕うんするところから出遅れてしまいました。耕うんした後に約30㎡の同じ形の区画を作り、区画ごとに番号札を立てるなどの一連の準備作業がありますが、これらの作業も遅れ、結局全ての準備が終わったのは開講日の講習開始時間の30分前、まさに滑り込みでした。

 前途多難を思わせる土の学校のスタートでした。今年もお天気対策には相当神経を使わなければならないでしょう。多少の悪天候でも健康でおいしい野菜を収穫するには…、野菜作りの技術向上をめざしてまた挑戦です。

カテゴリー: 土の学校 柏たなか
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