「都市」と「近くの農業・農村」を結ぶ柏たなか農園のブログ
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投稿日:2017年12月16日 11:30 pm
もち麦が発芽、柏たなか農園の畑はうす緑色の長いじゅうたんを何枚も並べたような景色になりました。寒い冬に向かってとりあえず芽を出してくれて一安心です。
昨年までは発芽した後の畑は全面うす緑一色でしたが今年は一定の間隔を空けて種まきしたので、種を播かなかった場所は土のままで全体としてはうす緑と茶色の縞しまになったのです。なぜこんなことをしたかというと、このブログで何度も書いてきたように2017年産のもち麦が黒穂病に侵され壊滅的な被害を受けたことから学んだ栽培方法改善の一環です。
今年は4月~5月の約1ヵ月間、ほぼ毎日朝から晩まで麦畑に入り、数百万本ものもち麦から病気に侵された黒穂を見つけては抜き取りまくりました。この際、もち麦の植わっていない畝間があるとその畝間に足を踏み入れ、畝の中に林立するもち麦の群落から病気の穂を見つけやすくなり作業効率があがります。さらに抜き取る際に少し揺らすだけで飛び散る黒穂病の胞子の拡散を多少なりとも抑えることができます。この経験からもち麦のタネ播きはばらまきするのではなく、筋状に播いておき収穫前に畝間に足を踏み入れやすくしておくことが大事だということが分かりました。
黒穂病だけではありません。いつの間にかもち麦畑に侵入してくる菜の花などの有害な雑草や他の麦類を抜き取るにも畝間があるとなしでは作業効率に大きな差がつきます。収穫後のもち麦の品質に大きな影響があるので毎年、収穫前の有害雑草抜き取りは欠かせません。縞しま模様の麦畑にしておくことにはこういう意味があります。
農園の真ん中に立つビニールハウスの入口には寒い風が吹く中、「柏たなかのもち麦」と書かれた旗がパタパタと音を立てています。柏たなか農園のある千葉県柏市北部は昔、田中藩という藩がありその後田中村を経て柏市に統合されました。この田中地区の農村風景の一部を構成する柏たなか農園のもち麦、来年が復活の年になりますようにと祈るような気持ちです。
投稿日:2017年11月22日 6:37 pm
もち麦のタネ播き、1ヵ月遅れでようやく終了しました。当初の予定では10月下旬に播くつもりでしたが10月10日ごろからの長雨で畑がぬかり堆肥を撒くこともできませんでした。11月に入ると台風が相次ぎタネ播き準備がまた中断しました。こうしてずるずると作業がずれ込んでしまったのです。
堆肥を入れ終わったのが11月6日でした。その後も台風などの悪天候の合間を見ての作業でなかなか進みません。本格的にもち麦のタネ播きができるようになったのは先週からです。全体の半分を占める利根川の堤防に近い畑が終わったのが19日、最後に残った県道側の畑も今日播き終わりました。
ここまでは柏たなか農園が直接耕作している畑ですが、他に近くの農家に委託して作ってもらっているもち麦があります。これらもやはり長雨と台風の後遺症を引きずっています。特に最大の委託先である未来農場では利根川の河川敷の畑でタネ播きしてもらうことになっているのですが、今もなお畑に水たまりが残っておりトラクターなどを畑に入れられる状況にはなっていません。この分だとタネまきは12月に入ってしまいそうです。隣りの千葉県野田市の農家にももち麦の栽培を委託していますが、こちらもタネ播きは先週末でした。全体に大幅遅れのスタートになりました。
2017年産のもち麦は黒穂病の大発生で全体の半分以上をつぶす事態となりました。これに懲りて今回はタネ播き用の種子はすべて消毒済のものを購入しました。タネの段階で対策を打っているので2018年産では病気の発生はないはずですが… 2017年産は大幅減収のため、すでに在庫が底を尽きかけています。2018年産こそはまともな収穫にしたいのですが、遅いスタートがどう響くのか心配です。
投稿日:2017年10月26日 9:28 pm
10月10日ごろからつづいた長雨、その後の台風で柏たなか農園の畑は大きなダメージを受けました。9月から出荷を始めた四角マメは長雨と日照不足でサヤが硬くなり変形したものが多くなってきました。さらに台風による強風のため四角マメのつるを絡ませていた鉄パイプ製のアングルが倒され、鉄パイプが曲がり、一部はパイプが引きちぎられていました。これまで経験したことのない強い風だったことが分かります。四角マメの出荷はこれで終わってしまいました。
体験農園の会員がトマトなどの雨よけ栽培に使っていた鉄パイプのアングルも見事に倒されました。アングルは鉄パイプを左右2本、馬蹄形に組み合わせて立てたものに縦方向の直管パイプを接続部品を使って固定させ、作物のつるがからむように網目状のネットを張ります。やがてつるがネットに絡みながら伸びてその重量がアングルにかかっても耐えられるようになっていますが、今度の台風はこのようなアングルの構造をいともたやすく倒してしまったのです。アングルは普通、接続部品を外せば簡単に解体して別の場所で組み立て直すこともできるのですが、今回の台風ではひしゃげてしまったアングルを構成している鉄パイプが不自然に折り曲げられ、さらには引きちぎられほとんど再利用できなくなってしまいました。
柏たなか農園の主力作物であるもち麦はちょうどタネ播き時期にきているのですが、これも長雨で畑がぬかってしまい作業にかかれません。タネ播きはまず堆肥を大量に投入し、その後もち麦のタネと元肥を播きます。ところが堆肥を散布する作業が大幅に遅れたため、タネ播きまでたどりつけません。それどころか、もち麦の栽培を委託している農家の畑の一部は利根川の堤防の外側にあるため季節外れの台風による増水で完全に水没、いつタネ播きできるか見通しも立たない状況です。
大混乱に陥っているもち麦のタネ播きですが、今週末には次の台風が近づいているようです。ここで再び強風と大雨が来るとさらに深刻な事態が予想されます。明後日の土曜日は一般市民の申し込み者も加えてサツマイモの収穫体験を予定していますが、実施できるかどうか微妙になってきました。今年の柏たなか農園の畑は、春はもち麦が黒穂病に襲われ、秋は長雨と台風に苦しめられで大変です。
投稿日:2017年8月29日 8:52 am
今年の夏は四角マメで行こうと思い春先から作戦を練ってきたのですが、7月中旬に定植した後天候に恵まれず収穫予定も遅れに遅れ、ようやく今週末に出荷できそうになってきました。
7月19日に関東地方も梅雨明けが発表されたのですが、まもなく戻り梅雨になりそのまま8月中旬まで約1ヵ月すぐれない天気が続きました。この間の日照不足が柏たなか農園の野菜にも影響しました。当初は8月初めにも四角マメの出荷が可能になるのではないかと期待して外部のイベントにも四角マメで出店するなどと言ってしまい、開催日の直前になって出店を断らなければならなくなりました。直売所や地元スーパーにも8月中ごろからと連絡したのですがこれもずるずる遅らせるしかなくなりました。
ここ数日、肌を刺すような強い日差しが戻りようやく畑の野菜たちも元気を取り戻しつつあります。四角マメは7月末から8月初めには青い花を咲かせ始めていたのですが、実の成長が遅れ気味でここにきてやっとマメのサヤが大きくなり始めました。この分だと今週末には何とか出荷できるだけの実がつくはずです。
もともとは柏たなか農園・土の学校の会員さんが珍しいマメができたからと言って農園に持ってきてくれたのがきっかけです。食べてみると美味しいので昨年は長さ10mくらいの棚にネットを張り四角マメのつるを延ばしてみました。出来た四角マメを他の会員さんに使ってもらったところ大変好評だったので今年から本格的に作ることにしたのです。
食材としてはインゲンに似ています。未熟の豆で、インゲンと違ってサヤの部分には4方向に羽を付けたようになっており、切り口の形が名前のとおり四角です。お薦めは天ぷらで、羽状の部分にころもがつきやすく、揚がった天ぷらは中心部がインゲンの柔らかさ、プラス羽の部分が野菜のしゃきしゃき感です。この二つを併せ持つ野菜は他にありません。この美味しさ、たくさんの方に味わっていただきたいという思いで作りました。
投稿日:2017年5月10日 5:15 am
もち麦畑に黒穂病が蔓延して、大変なことになったという話を先月このブログに載せました。その黒穂病に侵された穂を抜き取る作業が昨日5時過ぎに終了しました。作業を始めたのが4月19日だったのでちょうど3週間でした。この間、GWの中で3日間だけ作業を中断しましたが、それ以外はほぼ毎日朝7時から夕方4時過ぎまで黒穂の抜き取り作業に明け暮れました。体への負担もさることながら今後の経営へのダメージもあり、東京電力福島原発による放射能汚染以来の経営危機と受け止めています。
黒穂抜き取り作業を始めた4月19日はもち麦の穂がほぼ頭を出した程度でした。この時点で黒穂に侵された麦は黒い穂が出てくるのですぐ分かります。麦は分げつといって1粒の種が発芽したあと複数の茎をのばします。黒穂病は元になるタネ麦に侵入するので分げつした茎のてっぺんに形成される複数の穂が全員、黒い穂になります。最初の作業は黒い穂をみつけるや、分げつした茎をまとめて株ごと抜き取ります。
今回黒穂抜き取りに挑んだ畑は委託先の農場の1.6haの畑でした。最初に穂が出てから次々に後続の穂が出てきます。穂が出始めたタイミングを狙って、黒い穂が出てきたら黒穂病に侵されたということですから、分げつした茎をまとめて根元から抜き取り、畑の外に運び出します。結構な重さで作業は基本、中腰です。中腰で何百、何千と持ち麦の黒穂を引き抜く作業は人の腰にかなりの負担がかかります。若い人に手伝ってもらいましたが、作業のしんどさに音を上げていました。
この時点でまだ穂が出ていないもち麦があります。遅れて出てくるもち麦の黒穂や見落としていた黒穂を抜き取る作業を1.6haの畑でもう一度、展開します。こうして2段階に分けての黒穂抜き取り作業を進めました。合わせて3週間、体は完全に悲鳴を上げていました。それでも黒穂抜き取り作業を続けたのは、前回もここで説明しましたが、ももち麦を育ててくれた需要家の方々への供給をだけは2017年度も継続したいという思いからでした。
今回の黒穂病の発生は黒穂抜き取り作業による体への負担だけでなく、柏たなか農園の経営という点でも大きな影響を及ぼしています。柏たなか農園は2011年の東電福島原発事故による放射能汚染でもち麦も廃棄しなければならなくなりました。今回の黒穂病で再びもち麦の生産販売を継続できるかどうか、瀬戸際に立たされています。まず、伝染病の発生を未然に防ぐ仕組みです。黒穂病の場合は種子消毒が必須ですが、他の伝染病に対しても適切な予防手段の確認、研究機関への相談窓口の確保なども重要だということが分かりました。農業経営は天候以外にもさまざまなリスクがあるといことを思い知らされました。