「都市」と「近くの農業・農村」を結ぶ柏たなか農園のブログ
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投稿日:2012年6月22日 12:34 am
今日、柏市最大の農産物直売所「かしわで」の放射線測定チームが柏たなか農園に来て、畑の土壌に含まれる放射性物質の量を測ってくれました。
柏たなか農園では昨年秋から農園内の放射線量を測ってきました。今回はその中でも比較的高い線量が測定された畑を対象に土壌に含まれる放射線量を詳しく調べてもらいました。その結果は300~700Bq/kgで、この畑で収穫する野菜が国の基準値である100Bq/kgを超える、または近い数値になることはないと考えて良いようです。実際、6月初めに収穫したばかりの「もち麦」は5Bq/kgでした。
とはいえ、畑が放射能によって汚染されたことは事実で、畑の中でも放射線量の高い場所はあります。先週、居酒屋「SHIN」の篠田さんが率いるNPOが柏市放射線対策室の協力を得て柏たなか農園の畑全体の放射線量を詳しく調べてくれました。その中ではビニールハウスの両脇が柏市の基準値を大きく上回るなどが明らかになりました。昨年の原発事故直後にビニールハウスに積もった放射性物質が降雨によって流れ落ちたと思われます。
放射線量の高い場所については「除染」といって放射線量の高い土壌をはぎ取り、降雨などで流出しないようにして保管しています。東京電力の原発事故の後、汚染物質の除去が最も緊急を要する課題ですが、国も東京電力も現在に至るまで、正面から取り組む気配はありません。4月に柏市で開催された東京電力の農家に対する補償説明会では「汚染によって生じた農産物の販売額の減少については補償する」としていましたが、汚染物質の除去については「国の方針も示されていないので、現時点では補償の対象にならない」とのことで、完全にゼロ回答でした。
田畑の放射能汚染対策については国や東京電力だけでなく地元柏市で農業を担当する農政課も地元の農協もまったくの及び腰です。一刻も早く汚染マップを作り、汚染度の高い場所の除染を実施して、データの上でも消費者に安心してもらえる対策を取らなければならないはずです。にもかかわらず、農地汚染の現状を数値で把握することもなく、まして放射線量の高い場所の除染など全く考えていないようです。
除染費用について国や東京電力が負担する可能性が全く見えないこと、除去した汚染土壌を保管する場所が確保できていないことなどによると考えられますが、肝心な時に逃げ回っている関係者らの姿勢には憤りを感じます。さらに汚染物質の除去に頬かむりしたまま、原発の再稼働に突き進む政府の姿勢には呆れかえるばかりです。これは原発賛成/反対とか必要/不要といったこと以前の問題です。汚してしまったらまず汚れた場所をきれいにしてから次のことを議論すべきでしょう。農家が自己負担で除染をしなければならない現実に対して、怒りをどこにぶつければよいのでしょう。
「かしわで」は約220の会員農家の田畑をすべて測定し、柏市内の放射能汚染マップを作ろうとしています。ようやく3分の1まで来たところです。柏市が放射能汚染の“ホットスポット”とされ、柏の農業が風評被害も含め多大な損失を被る中で、消費者の安心、信頼を取り戻すために止むにやまれず取り組み始めたものです。しかし、農産物直売所が自ら動き出さなければならなかったのは公的セクターの怠慢、逃避の結果ともいえます。「いざとなったら逃げる」ような公的セクターとは何なんでしょう。税金や電気料金を払うのがばかばかしくなります。
投稿日:2012年6月5日 10:17 pm
この時期、5月末から6月にかけては1年で一番天気に悩まされます。柏たなか農園の主力作物であるモチ麦を収穫する時期だからです。
「できることならずうーと晴れてほしい」と空を拝むような心境です。晴れが続きさえすれば麦の実りが進み、収穫できるようになります。収穫した後、日に干して乾燥させ、さらにゴミを取り除くまでの後工程もうまく行きます。ところが、この時期の天気は不安定になりがち。たとえ1日晴れてもその先が読めないので、なかなかスタートボタンを押せないのです。そうはいっても、いたずらに決断を遅らせていると「倒伏」といって麦が倒れてしまい刈り取ることも難しくなります。このため毎年、ギリギリの決断を迫られます。
今年は昨日、6月4日に刈り取りをしました。麦が収穫できるまで実ったかどうかは麦の水分量で判断します。だいたい15%を切るくらいになればよいのですが、今回は平均で17%強とかなり高めです。すべての実が一斉に熟して行くわけではないので、一部水分量が多くても見切りで収穫を始めなければならないのですが、それにしても今年は倒伏してしまうのではないかという不安からかなり前のめりになってしまいました。
収穫はコンバインという農業機械を使います。去年の今頃は中古で買ったコンバインが壊れてしまい急きょ別の中古機を探さなければならず、大変な思いをしました。それから1年、シートカバーを掛けて大事にしまっておいたのを出してきました。作業はいつも手伝ってくれている居酒屋「SHIN」の篠田さんにも協力してもらいました。刈り取り作業そのものは順調で利根川寄りの麦畑を2時間余りで片づけました。残るは県道寄りですが、もう少し水分量が落ちるのを待ってからとします。
生乾き状態のモチ麦を天日で乾燥するのですが、十分乾燥させるには晴れて暑い日が2日か3日はほしいところです。ところが今日は1日曇りで気温も上がらず、さらに明日は雨模様ということでモチ麦の天日干しがなかなか進みそうもありません。気温も低めの予想です。このまま梅雨に入りでもしたらどうなってしまうのだろうと心配になります。とにかく雨や朝露に当たらないようにビニールハウスの中にシートを敷いてその上にモチ麦を広げました。
投稿日:2012年5月31日 9:10 pm
今、農園は花盛り。お花畑ではポピーがいま真っ盛り。去年までと比べると花の数が少ないように見えます。今年は季節が春になっても気温の低い日が続いたこと、去年種まきした後の栽培管理がうまくなかったことが原因でしょうか?それでも真っ赤なポピーの花が約100mも続き、畑の景観を作ってくれました。
夏に向けてトマト、キュウリ、ナス、スイカ、カボチャなどの果菜類も次々と花をつけ始めました。この後、トマトはわき芽を取りまくり、キュウリやナスは収穫に追われ、スイカは収穫のタイミングを測り、カボチャは長期間にわたり雑草対策に悩まされることになります。それでも花が咲かなければ始まりません。これらの花のおかげで農園も私もとても明るい気持ちになります。
一方、困った花もあります。葉物野菜も一部花が咲きトウ立ちしてしまいました。ホウレンソウは中心部に茎が立ちあがりました。シュンギクは頂上に丸い蕾を付けています。もうそろそろおしまいという合図です。茎ブロッコリーも花をつけ始めました。普通のブロッコリーと違って主な食用部分は茎なのですが、花が咲くと間もなく茎の周りのすじが硬くなり食べられなくなります。というわけで、葉物野菜では花が咲いて困ったなという状況です。
ジャガイモは薄くピンクがかった色の花をつけています。雑草も花盛りですが、こちらは入れ替わり立ち替わり、無数の雑草が花を咲かせては実を結んでいくので、いつが花盛りか分からないほどです。
うれしい花、そうでない花――人間の都合で勝手なこと言ってます。きちんと栽培管理ができていればみんなうれしい花になるのかもしれません。
投稿日:2012年5月2日 2:52 pm
昨年11月に種まきしたモチ麦、急に伸びてきました。1ヵ月前にはまだ缶コーヒーと背比べをしていたのが、すでに背丈は又の下あたり。この1週間で穂も出そろいました。5月末には収穫できるはずです。昨年は収穫用の機械が途中で壊れ急きょ買い替えたのですが大幅遅れで収量は激減しました。反省すべき点がいろいろあり、今回は種まきから改善を加えています。
昨年は東京電力の原発事故による放射能汚染がモチ麦の販売にも大打撃でした。今年はどうなるのか心配ではありますが、きちんと計測したデータを積み上げ、このままいけばモチ麦1kgあたりどの程度の放射線量になるかを予測し、実際の収穫物の測定結果と突き合わせて確認できるようにするなど、安全性を判断してもらえる取り組みを進めています。結果は今月末の刈り取りによって判明します。
柏たなか農園にヤギくんが2頭やってきて早くも半月がすぎました。来てから3日目に柏市の南方約20kmの位置にある家畜のサポートセンターのような施設に連れてゆき去勢手術をしてきました。手術も含め、スタート時は大変でしたが、近所の子供たちの人気者になるなど、今では農園全体を明るく楽しくしてくれています。とはいえ、毎日の世話が欠かせないので、私自身の自由時間はほとんどなくなってしまいました。
紹介本にはヤギはどんな草でも食べると書いてありましたが、実際には優先順位があるらしく、ぜんぜん食べてくれない雑草もあり、太い茎の部分を残してしゃぶり尽くす草もあります。畑の春の雑草で一番嫌われているのが「菜の花」ですが、今まで観察した限りでは菜の花はヤギくんらの大好物。時々柏たなか農園の周りの耕作放棄地などに生えている菜の花を見つけてヤギくんらに食べさせてやっています。
いま柏たなか農園の最大の作物はモチ麦です。このモチ麦をヤギに食われたら大変なのでしんぱいしながらでしたが、先端の穂の部分を少しかじる程度で全体の収量を脅かすようなことにはならないようです。
投稿日:2012年4月2日 8:09 pm
4月に入りようやく首都圏各地から桜開花情報が出てきました。柏たなか農園の近辺でも枝先が色づき開花寸前です。このブログで何回か紹介した医王寺の桜の木が昨年、切り倒されてしまったのですが、それはそれでさびしいのですが、大きな木がなくなると周りの草花が急に目につくようになりました。柏たなか農園のすぐ裏の農家では離れの前に立つ大きな梅の木が写真のように咲いています。やはりのどかな日本の原風景といった趣です。しかし、こののどかな風景は一昨年までのものと同じではありません。
去年の今頃は東日本大震災の後始末やらで、桜の花をゆっくり眺める余裕がなかったような気がします。その後に来た東京電力の原発事故による放射能汚染が地域の風景を見る目を一変させてしまったのです。放射能汚染は首都圏各地を襲い、特に茨城県南と千葉県北西部がセシウムの飛散量が多い場所として注目されることになりました。地域の農業も大きな打撃を受けました。
半減期の長い放射性物質「セシウム」が農業にどのような影響をもたらすのか、はっきりしない中で、国の対策もいまだに整ってはいません。しかし、手をこまねいているわけにはいかないので、柏たなか農園でも関連情報を集め、出来る限りの対策を施してきました。基本は畑と農作物の放射線量を出来るだけ詳しく計測することです。その結果、放射線量が高い場所の土は取り除くことにしました。また、放射線量が高くない場所では、堆肥を入れる、よく耕すなどにより畑の土壌から農作物にセシウムが移行しにくくする、またセシウムが移行しやすい作物の栽培を避けるといった対策をとってきました。
畑での実習を通じて野菜作りを学ぶ「土の学校」については、会員の皆さんに線量計を貸し出し、各自で畑の放射線量を測ってもらうことにしました。また土壌に含まれる放射線量と収穫物の放射線量も簡易的ではありますが、測定し規制基準をクリアしているか確認することにしています。
農産物は食物として身体の中に取り込まれるので、放射性物質が含まれていればいわゆる「内部被ばく」の原因になります。とはいえ人の体には被ばくに対して防御機能が備わっており、これまで報告されている首都圏での放射線量では「被ばく→ガン発症」の確率は極めて低いともいわれています。ただ、発症のメカニズムや発症の確率などが解明されているわけではありません。自らの手でデータを集め、できるかぎり正確な情報をもとに、放射能問題に向き合っていこうと考えています。